888 名前: 766 ◆6XM97QofVQ 投稿日: 2006/08/16(水) 20:58:34
鍛錬をしよう。家に帰ることにした。
空いた時間は有効活用しなければ。
未熟な己を鍛えるためには鍛錬が必要不可欠である。
なにしろ目指すは正義の味方。それこそ、身体を幾ら鍛えても足りはしない。
鍛錬の場所として道場と土蔵のどちらにしようかと迷ったが、結局土蔵に行く事にした。
身体は人前でも鍛えられるが、魔術は人目のない夜かこんな機会にしか鍛えられないからだ。
———そしてなにより。
なんか絶望的にイヤな予感がするが、ステキな出会いが待っている気がするのである……!
『じゃじゃーん、お久しぶりです! マジカルルビーちゃんの本気に無敵にステキに勇気な大復活祭の始まりです!
もう、五年も鎖と鍵で緊縛プレイだなんてっ。士郎さんって案外マニアックだったんですね(はーと)』
ほら、やっぱり。
なんかよくないのが復活してる。
けばけばしい原色の杖、柄頭には白い両翼に星の紋章。
平行世界の自分より技術を借り受け、自らの望む姿に『変身』できるという悪夢のリリカルアイテム。
これ別名を魔法少女ステッキという。
そしてこの魔法少女ステッキ。
オモチャっぽい見た目に反し、実は第二魔法を応用しているという、ある意味超ド級の魔術礼装である。
「お、お前! あの封印(鎖と南京錠)をどうやって———!?」
見れば、カレイドステッキを入れていた箱は粉々に砕け、箱を雁字搦めにしていた鎖はぶちぶちと千切れている。
完膚なきまでに破壊された封印の様子に、俺は驚愕するしかない。
そんな俺に向かって、カレイドステッキの精・マジカルルビーは呆れたように言ってくる。
『五年経っても相変わらず士郎さんはおバカさんですねえ。
私は魔術礼装なんですから、封印は魔術的なモノでなければ効果がないに決まってるじゃないですか。
つまり、あんな箱からは脱出しようと思えばいつでも出る事ができたワケなんです』
えっへん、と胸(?)を反らすルビー。
そしてその言葉を聞いた瞬間、俺の背筋に寒気が走った。
「じゃあこの五年、俺は常に危機にさらされ続けていたのか……!」
冷や汗どころの話ではない。
土蔵での鍛錬の最中、常に背後にはこの愉快型魔術礼装の影があったわけなのだ。
今日まで襲われなかったのが奇跡である。
『ふふふ、今日この日までを”あの日”の士郎さんの為に自己研磨の日々とさせていただきました。
マジカルルビーはレボリューション! 進化に進化を重ね、私は遂に男性用機能の習得に成功したのです!』
きゃー、と喜ぶ割烹着のアクマ。
あくまでイメージだけど。
それにしても男性用機能? しかも、俺のため?
…………何か嫌な予感がする。
「それって、また俺を変身させるつもりなのか……?」
『はいその通りです!』
シークタイムゼロセコンド。
脊髄反射な勢いで答えるルビーの潔さに正直脱帽です。
『五年前は魔力のない方を無理やり変身させて失敗したり、男の子の士郎さんを変身させようとして大失敗したりと散々でしたから。
そしてその失敗を反省し、私は新生カレイドステッキとして生まれ変わることにしたのです。
新しいニーズにもバッチリ対応。いつでもお客様のご期待にそえるように(契約者が)努力してます!』
どこぞの宣伝文句のような科白だった。
頭に響く声が破滅的に可愛らしいので、本性を知らなければコロッと騙されてしまうだろう。——実際、五年前に経験済みである。
しかし、新生というわりには、どこも変わっていないような気がするけれど……?
「新生って、機能が追加されただけなのか?」
『いえいえ、もちろんデザインも一新します。男性用ということで杖から剣に形状が変更されることとなりましたので、ご了承ください』
「……ふーん」
889 名前: 766 ◆6XM97QofVQ 投稿日: 2006/08/16(水) 20:59:28
別にどうでもいいんだけど————剣、か。
『おや、興味津々といった顔ですね?
ちょうどいい機会です! あれから五年も経ってますから、そろそろ契約の更新をしないといけないかなー、と思い始めていたところなんですよ。
というわけで、諸々の条件は五年前のを流用しますから、ちゃちゃーっと更新手続きを済ませてしまいましょう!』
「断る。あんな悪夢を繰り返さないためにも、俺はお前とは契約できない」
『もう、士郎さんったらいけずなんですから。ほらほら、ワンタッチするだけで(貴方の人生)終わりますから。そんなこと言わないでくださいな』
そうして断る俺と、それに食い下がるルビーのイタチゴッコが始まった。
相変わらず会話が通じていないというか、受信機能が動作してないというか。
最初の異文化交流はこんな感じだったのだろうか? 先人とは偉大なものである。
『あ、もしかしなくても現実逃避してますね? 士郎さんがそんな態度をとるのであれば、こちらにも考えがありますよ?』
考えがあると言われても、手も足もない、もとい手も足も出ないステッキの精が何をするつもりなのだろう?
隅っこの方で『ディーフェンス、ディーフェンス』とでも言い続ける気だろうか———?
『ていやっ☆』
「ぶほぉっ……!!!!?」
あまりにやる気のない掛け声と同時、あまりのショックに噴き出した。
まったくもってなぜだか分からないのだが、右手が勝手に動き出してカレイドステッキをがっちりキャッチ!
理解の範疇を超えた自分の身体の行動に俺もびっくり。
「な、なななっ!? こ、このバカ精霊っ! 俺に一体何をした————!?」
『ふふふ、三年前に契約した時のパスを利用して脳の一部を洗脳、身体機能を掌握しちゃいました(はーと)』
「はーと、じゃねえぇええ————!」
もう何でもありだコイツ————!!
『———さあ、契約の更新も終了しましたし、そろそろ次回予告のお時間です! また次回にお会いいたしましょう!
次回、魔法少女カレイドルビー改め魔法○○カレイドジャスティス第二話、
”喚び出せサーヴァント! 狂乱・穂群原学園血煙殺人事件、被害者大復活!”にジャスティス・カリバーン!』
またねー、と手を振るアクマの姿を幻視する。
くらくらと目眩がする。
どこでどう間違えたのか。何をどう間違ったのか。
———どうやらこの日、俺はマジカルな世界の住人となってしまったらしい。
≪衛宮士郎はカレイドステッキ改め、カレイドソードと契約を結んだ!≫
———魔法○○カレイドジャスティス。この○○に入る単語は?
※この選択肢で、変身の際にどんな姿になるか決まります。仮面ラ○ダーは他作品の二番煎じなので無し。
最終更新:2006年09月14日 17:01