873 名前: 仮面ライダールート#2-1 (M8z3Z2VY) [sage] 投稿日: 2004/11/15(月) 20:29
――――interlude
むかしむかし、あるところにひとりのヒトがいました
そのヒトはとても乱暴で、みんなをくるしめてばかりいました
そのヒトは何でもできたから
だれの力もひつようなかったから
いつもいつも独りぼっちで、すごくすごくさびしかったのです
そこで神様はかんがえて
そのヒトに友達をあげることにしました
そのヒトは、とってもとっても喜びました
たったひとりの友達が喜んでくれるように、友達をくれた神様に喜んでもらえるように、善く生きようときめました
そのヒトはがんばって、とても良いおうさまになりました
まわりのヒトたちが喜んでくれることが嬉しくて
おうさまは、もっともっとがんばりました
そんな、ある日のことです
おうさまの元に、がんばるおうさまのことが好きになってしまった女神様がきました
その女神様は、とてもきれいな金色をした髪の毛をもっています
とても美しい空のような瞳ももっています 肌だって雪のように真っ白です
けれども、女神様はとても怒りんぼで、ヒトのことを妬んでばかりでした
そのことを知っていたおうさまは、女神様から、大好きですと言われても
あなたは、とても醜いひとだから好きになることはできません、と断ってしまいました
これには、女神様も腹を立て
神様たちに、おうさまを殺してくれるよう頼みました
けれど神様たちは、おうさまは悪くないよ、と答えます
それじゃあ、女神様の怒りは収まりません
おうさまの友達を殺してくれないと、ずっとずっと怒り続けます、と言ったのです
神様たちは困りました
女神様が怒ったままというのは、とても大変なことだし
友達を殺してしまうのは、おうさまにとって、とても哀しいことだったから
けれど結局、神様たちは、おうさまの友達を殺してしまいました
おうさまは、また独りになりました
おうさまは、この世の全てのたからものを持つくらい、すごいおうさまでした
けれど、すべてを持っているということは、持っているものすべてに、かちがないということです
けっきょく、そのおうさまは
ほんとうに欲しいものは、なにひとつ手に入れずに
独りぼっちのまま、その一生を終えたのです
――――interludeb out
874 名前: 仮面ライダールート#2-2 (M8z3Z2VY) [sage] 投稿日: 2004/11/15(月) 20:54
「………………っ」
眼を覚ますと、見慣れた部屋にいた。
「なんだ。ここ、俺の部屋じゃないか」
そう言いながら身体を動かした途端、全身がとんでもなく痛んだ。
「っ―――――――!!」
体中の筋肉が引きつる感覚。
筋肉痛だ、間違いない。
「――――」
なんでこんな事になっているのか、原因不明。
まあ、とりあえず……身体を動かすこと自体はできるようなので、洗面所に行って顔でも洗ってこよう。
「――よっ」
体を起こす。
眩暈がする。
倒れそうになるのを、思いきり脚をふんばって防ぐ。
「……う、っわぁ……」
とんでもなく全身がだるい。
ここまで来ると、重いと表現したほうが良い気がする。
五臓六腑にじわじわと何か得体の知れないモノが浸透していくような感覚。
神経を一本一本針金に変えていけば、こんな感じになるのだろう。
「……ううっ……」
妙な事を考えていたら、余計に体が重くなった。
洗面所に行くのも一苦労だ。
水を捻ってバシャバシャと顔を洗う。
「ええいっ…」
気合を込めなきゃ歩けない、というのも情けない話だ。
よたよたと情けない動作で前進、前進。
居間に到着。
桜も藤ねえも、まだ来てないらしい。
居間には朝食の支度も無く、暴走状態の藤ねえもいない――――のだが、
「おお、やっと起きたか雑種。さっさと食事の支度をしないか」
代わりに、金ぴか金いろ我様最強な王様が座ってやがった。
「――――――――ええっと……」
なんと言うか。
何故に貴方様はソンナにも堂々と座ってるんでしょうか。
座布団でふんぞり返っても格好良くないと思うのですが。
「む……どうした?昨日は我に荷物運びなんぞさせおって、これは高くつくぞ?利子を増やされたくなかったら、さっさと食事を作れ」
―――――ああ、なるほど。
目の前に存在する我様は、ギルガメッシュ。
俺のサーヴァント。
つまり、俺は。
「遠坂と会った後、ぶっ倒れたのか」
「その通り。まったく……貴様が”リントの戦士”だったとはな。”ゲゲル”も始まっていないというのに……」
「――?。まあ、良いや。今作るからチョッと待ってろー」
なんだかギルガメッシュが妙な事を言ってるけど、気にしないでおこう。
時計を見る。――朝の九時。
ギルガメッシュが、如何なる生活サイクルを持っているかはわからないけど、昨日遠坂と会ったのは――遅く見積もっても、十一時かソコラだろう。
十時間も立ってれば、どんなヤツでも腹は減ってるはずだ。
なら――礼も兼ねて、豪勢な朝食を振舞ってやるとしよう。
冷蔵庫を開ける。
――衛宮士郎、朝の豪華メニューより、今朝はオムレツにしようか。
卵4個に、チーズとウィンナソーセージ数本、牛乳。
チーズは5mm程度の立方体に切り、ウィンナソーセージはぶつ切り。
その間に油をしいたフライパンを火にかけておく。
で、卵は2個割って溶き、そこにチーズとソーセージと牛乳を投下、ちょっとだけ塩と胡椒も振っておく。
混ぜたソレを、フライパンにソーッと入れて、焼き始める。
しばらくしたら、上面が固まらないうちに二つ折りにして―――皿に載せて。
「ほい、完成」
ついでに、作りおきの茹でたブロッコリと、プチトマトを飾りつける。
ちらりとキッチンから居間を見ると。
「―――――――」
何処かそわそわと料理の完成を待っているギルガメッシュの姿が見えた。
これはこれで、微笑ましい光景なのだろう。
さて――後は、桜と藤ねえの分を作らないとな。
―――ん?
何か忘れているような……。
1.藤ねえにギルガメッシュのことをどう説明しよう。
2.桜にギルガメッシュのことをどう説明しよう。
3.いや何も無い。何も無いはずだ。何も無いと思う。何も無いときめつけておく。
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最終更新:2006年09月24日 15:11