212 名前: 仮面ライダールート#interlude5 (M8z3Z2VY) [sage] 投稿日: 2004/11/22(月) 01:11

――――interlude


扉の隙間から差しこむ月光が、淡く土蔵の中を照らし出す。
その中央に蹲るようにして座りこんでいるのは、衛宮だ。

「――み、つづり……?」
「どうした衛宮、そんなに汗びっしょりになって?」

ゆっくりと脚を踏み出す。
静かな足音――――それから、あたしと衛宮の呼吸音だけ。

「あ、う――ん。えっと、だな……」
「鍛錬、だろ?藤村先生から聞いてるよ」

衛宮の隣にしゃがみ込む。
――――その顔は、本当に汗びっしょりで。
コイツは、ここまでして何をしたいんだろう。

そう想った時には、素直に口が動いていて、あたしは衛宮に問いかけていた。

「なあ、衛宮………そんなになってまで、何をしたいんだ?」
「―――――――なりたいものが、あるんだ」
「なりたいもの?」

うん、と小さく頷く。
それから何処か照れくさげに頬を掻いてから、衛宮は言った。

「仮面ライダーに、なりたいんだ」
「…………仮面ライダー、か……」


朝、衛宮から唐突に言われた言葉が蘇る。
――あの時は、ただ笑う、というか腹が立っただけだった。

何を馬鹿なことを言っているんだろう。
仮面ライダーになりたい、なんて幼稚園児くらいしか言わないだろう。


―――――藤村先生から、衛宮があの大火災の生き残りだと教えてもらったのは、昼休みの事だった。

困っている人間を見ればソイツが嫌な奴でも良い奴でも見知らぬ他人でも関係無しに助けようとし、喧嘩をしているのを見れば割って入って両方から撲られる。

そして、仮面ライダー。

多分、衛宮は――――。



「うん……良い夢じゃないか」

「―――美綴は笑わないんだな」

「そりゃあ、朝は驚いたけど……人様の夢を笑う奴は馬に蹴られて死んでしまえ、だ。
 あたしは応援するよ、衛宮の夢」

そっか、と頷いて、衛宮は嬉しそうに笑う。

衛宮士郎は、嬉しそうには笑っても――――楽しそうには笑わない。

だから、

―――――多分、衛宮は、まだあの赤い空の下にいる。



あたしは―――


1.そんな衛宮を見るのが、溜まらなく辛かった。
2.そんな衛宮に凄く腹が立った。


――――interlude out

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最終更新:2006年09月24日 15:25