345 名前: 仮面ライダールート#4-6 (M8z3Z2VY) [sage] 投稿日: 2004/11/23(火) 21:21

ゴウラム。

親父が俺に残して遺産の一つ。
古代の戦士が、『馬の鎧』として使ったとされる石像。

――――そんなモノが動く筈はない。
    こんな場所に現れるわけもない――、
だが、何故か。

衛宮士郎には、ソレが己の愛車にも纏えるものだという、確信がある。



そして、背後。
何百メートルと離れた場所から、宙を飛んで、ソレが現れた。


―――黒い装甲。

   金色の肉体。


降り立ったソレは、即座にHAYABUSAを覆い尽くし、融合する。




――――――目の前には、鉛色の巨人。


振り下ろされる斧剣より早く、俺は飛び下がり。

ファルコンゴウラムとでも呼ぶべきだろう、黒色の単車へと跨った。


346 名前: 仮面ライダールート#interlude6 (M8z3Z2VY) [sage] 投稿日: 2004/11/23(火) 21:35

――――interlude




「――――――」

間桐慎二を襲うのは、吐き気か悪寒。
ヤツが……バーサーカーなどという『化け物』と互角に渡り合った『化け物が跨っているのは、バイクだ。

ただ、妙な装甲を纏ったバイク。

あんなモノで、バーサーカーに勝てるわけがない。

ならば、そんなモノに脅威を感じる必要など―――――

「―――――――」

―――悪寒がする。

ヤツが跨っているものはバイクなどではなく、もっと別の代物であり。

ソレは、バーサーカーを蹴散らして余りある。


「――――――――」


―――バイクが、疾駆する。

ただの鉄の塊。
そんなもの、防ぐまでもないと向き直る黒い巨人。

―――だが、その刹那。

「■■■■■■―――!!!」

鉛色の巨人は、間桐慎二たちに背を向け、全力で迫るバイクを迎撃し―――



「おおおおおおおおッ――――!!!!!!」


『戦士』の叫びも高らかに、激突したバイクは。





―――その瞬間、ありとあらゆる音を消し去った。






「――――――――!!!!!」


ただ頭を庇い、地面に組み伏せ、耐えた。
聴覚が麻痺したのか、何も聞こえない。
判るのは体を奮わせる大気の震動と、肌を焦がす熱さ。
烈風で弾き飛ばされた様々な破片は四方に跳ね飛ばされ、

ごっ、と重い音を立てて、慎二のすぐ傍らにも突き刺さった。

―――――白い閃光は、その実一瞬だったのだろう。
体はなんとか致命傷を受けずに、その破壊をやり過ごせた。

「な―――――」

美綴綾子は、呆然とソレを見ていた。
何が起きたのかは判らない。

ただ、衛宮が……『化け物』が起こした衝撃によって、建設途中の高速道路が炎上しただけ。


爆心地であったろうコンクリートは抉れ、クレーター状になっている。


それほどの破壊を『化け物』は巻き起こし。

それほどの破壊を以ってしても、巨人はただ、膝をついただけであった。

「え、衛宮……?」

美綴の声には力が無い。
火の粉が闇に溶けて行く中。
黒い巨人は微動だにせず焔の中に佇み、居合せた者は声も無く惨状を見据えている。

火の爆ぜる音だけが耳に入る。
このままでは大きな火事になる、と思った矢先。

「…………?」

その漆黒の悪魔が、戦場を駆けた。



――――interlude out


347 名前: 仮面ライダールート#4-7 (M8z3Z2VY) [sage] 投稿日: 2004/11/23(火) 21:58


――――ブオンッブオンッブオンッ――!

体の下でアイドリングを続けているHAYABUSAの燃料タンクをぽんぽん、と軽く撫でて、俺は感謝の念を示した。

ファルコンゴウラム。

本当にできるとは思わなかった、この光景。

火の爆ぜる音。
地に膝を付き、微動だにしない鉛色の巨人。



だが、それだけではなかった。




―――――黒い影が、美綴、慎二、バーサーカーの間を滑りぬけて来る。


一度、二度、そして三度。


残像を残して奮われた黒き杖を、

衛宮士郎は、紫電の剣で辛うじて受け切った。




「――――――なるほど、超変身だけではなく、ゴウラムまで操れるようになったか」



その凄まじき戦士は、楽しげな声で謳う。

衛宮士郎へ撃ちかかってきた、その姿は、まさに―――


黒き装甲、黒き瞳。

首に巻いた赤い布切れと、その僅かばかりの違いを除いた、その姿はまさに――

『仮面ライダー』そのものであった。



それが――――――――






――――理由もなく、吐き気を呼び起こした。





「っ――――!」
見えるはずが無い。
見えるはずが無いというのに、確かに見た。
仮面の下で、こいつは口元をゆがめている。

何故だかわからないが、こいつは俺に何かを見せつけるように笑ったのだ。


……頭痛がする。
背筋に走る悪寒が止まらない。
まるで、変身に失敗した時のように、背骨が熱くなって吐きそうになる――――


「ふん、見なおしたぞ、衛宮士郎」

――何時の間に現れたのか、言峰綺礼の声が聞こえた。

「どうしてこうして、しっかり『正義の味方』をやっているみたいじゃないか。
 その努力に免じて、今日は『殺さずに』おいてやろう―――戻れ、バーサーカー」

……黒い巨人が、動く。
焔の中、巨人は神父の声に答えるかのように下がっていった。


―――ぎりぎりと杖が前に押し出されていく。
   それを、俺は必死に押し返す。

「……そう急くな。楽しみは後にとって置け。
 少年、貴様も良くやる。
 私はただバーサーカーを貸しただけだというのに、衛宮士郎の成長を促進させ、さらには『行動理念』まで奪って来るのだからな」

「―――――」

慎二の声は聞こえない。
何か言ったのか、それとも何も言えなかったのか。

「だが、私は間桐が嫌いでね。
 ―――二人とも、しばらく気絶していてもらおう」

鈍い音。

倒れたのは、慎二と――美綴か。

「ああ、紹介しておくか。
 彼が、私の『ライダー』だ」

目の前の男を見詰める。

――――笑っている。
    確かに、コイツは笑っている。


「彼は、君を殺したいと思っているのだが――君はそうではないのだろう。
 だから、私が理由を作る。
 ふむ、こういう時は悪の秘密結社とやらはなんと言うのだったか……」

「ああ、そうそう。思い出した。
 『美綴綾子を救い出したければ、明後日の午前零時、教会の地下へ来い』 これで良いのかな、ライダー?」


「――――――」


黙ったまま。
仮面ごしに、男は此方を見据えて来る。


「では、また会おう衛宮士郎、ギルガメッシュ」


――――そして、衛宮士郎の延髄に衝撃が叩きこまれ、


意識は、そこで消える。


最後に残ったのは―――――



1.美綴綾子の声だった。

2.ギルガメッシュの声だった。

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最終更新:2006年09月24日 15:34