390 名前: 仮面ライダールート5-5 (M8z3Z2VY) [sage] 投稿日: 2004/11/23(火) 23:42
―――――HAYABUSAが駆けぬける。
その背後で――――
「行くぞ、狂戦士。
死ぬ覚悟は、充分か―――!」
王の財宝が放たれた。
――――――扉を幾多の木片に粉砕しながら、バイクが聖堂へと突っ込む。
整然と並べられた長椅子を蹴散らし、止まった衛宮士郎に、
「来たか。随分と遅い到着だな、衛宮士郎」
冷め切った声が響く。
”聞きなれた”声は二階から。
祭壇の前、雲越しのドンヨリとした光に照らされて、その男は立っていた。
――――赤い髪。
――首に巻かれた赤い布切れ。
その姿は、まさに―――。
エミヤシロウ、そのものだった。
「な、お……俺――?」
「そうだ、衛宮士郎。
この身は、かつて『お前だった』存在だ。
生きながらにして抑止力として取りこまれ、闘いの果てに殺された、哀れな『お前』の馴れの果て。
――それが、私だ」
―――――――そう、アマダムは一つしか存在せず。
――――仮面ライダーは、衛宮士郎の前に、彼の義父しか存在しない。
――だというのに、衛宮士郎の前に仮面ライダーが現れたのならば。
――――――それは、衛宮士郎そのものだ。
「――英霊と呼ばれるものは、縁のない召喚者の元にはあらわれない。
そして、前回の闘いの時、言峰綺礼と私の間に、まったくの縁は存在しなかった。
では何故、私が召喚されたのか」
「簡単なことだ。
『これから縁ができる』
ただそれだけのことだった」
「――――――――」
この目の前の男、ライダーの言う事が真実ならば。
英霊、エミヤシロウ。
自己を鍛え上げ、仮面ライダーとなった自分そのものだ。
「ライダー、美綴はどうした」
「あの娘ならば、言峰のところだ。
貴様が辿りつけなければ、殺されるだけだろう」
「な――――――」
「別に、ヤツは『開放する』とは言っていない。
まあ、貴様が来るまで手出しはしないと言っている分、まだ良い方だな」
「まあ、結果は見えているがな。
私はココで貴様を殺して宿願を果たし、
美綴綾子は未熟なヒーローに希望を抱いたまま殺され、
言峰綺礼は聖杯を開放する。
そして、冬木の街は呑まれる」
「―――宿願、って……!」
頭に血が上る。
その所為で、思考が上手く回らない。
「―――――――」
答えず、ヤツは此方へと歩き出し、
「――――アマダム、というのはだな」
そして、唐突に口を開いた。
「グロンギと呼ばれる人類の天敵を滅ぼすために、人類を生きながらにして『守護者』の高みへと登らせるための宝具だ」
「『強くなった』から『守護者』になるのではなく、
『守護者になった』から『強く』なる」
「因果の逆転のようなモノだ。
発明したモノは、さぞかし天才だったのだろうな」
―――脚は止まらない。
「だが、それがどういう意味かわかるか?」
「『戦士』となった瞬間、望むと望まざると関わらず『守護者』として取りこまれる運命になる」
「人間に、とうに愛想がつきていても、な」
――淡々とした声、そこには侮蔑と嘲笑が篭っていた。
「俺は、確かに衛宮士郎が望んだとおり、仮面ライダーとなった」
「だから、俺は―――お前を、殺す」
そう言って、アーチャーは、その言葉を口にした。
「―――体は鋼でできている」
391 名前: 仮面ライダールート#interlude7 (M8z3Z2VY) [sage] 投稿日: 2004/11/24(水) 00:05
――――interlude
衛宮士郎は傷つきながらも、ただ駆けていく1匹の雑種にすぎない。
だが、彼が背中を預けても良いと思った人物だ。
そいつから、この場を任された。
そいつから、背中を任されたのだ。
ならば、英雄王ギルガメッシュが引けるわけがない…!!
「さあ、狂戦士。
――死ぬ覚悟は十分か?」
宝具が浮かびあがる。
バーサーカーまでの距離はわずか10メートル。
その程度の距離、アレは即座に詰めて来るだろう。
そんな事はわかっている。
だが、此方とて『この世全ての財』を手に入れた英雄。
鉛色の巨人を捕らえる程度の力は持っている。
「■■■■■■――――!!!」
雄たけびを上げて、斧剣が振り回される。
砂塵を巻き上げ、打ち砕かれた路面を灰燼に帰し、そして英雄王目掛け奮われる。
以前と何も変わらない狂戦士の姿。
―――――否、違う点がある。
吹き荒れる旋風。
バーサーカーの斧剣は、ことごとく弾かれているのだ。
教会の前の広場。
その中央に君臨するギルガメッシュの『宝具』によって。
無数の剣が舞う。
英雄王の背後から放たれるソレらは、一つ一つが紛れも無い『伝説の武具』であった。
貫く。
それこそ湯水の如く。
底無しの宝具はバーサーカーの斧剣を弾くだけではなく、その体を蹂躙していく。
首を跳ばし、心臓を抉り、四肢を貫き、切り刻む。
――――だが、それだけでは死なない。
巨人は即死する度に蘇り、着実に前進していく。
既に八度。
それだけの数殺されながら、バーサーカーは前進する。
「―――自動で蘇生、か。
ふん……おおかた、ヘラクレスあたりだろうな」
ソレを楽しげに笑って迎えて、
「世界最初の英雄王。
その最期の相手としては役不足だが―――――まあ、良い。
せいぜい、派手に散れ―――!!」
斧剣が走る。
ただ笑っているだけの男に肉薄し、その剛剣を叩きつけんと一閃し――――
「天の鎖よ――――――!!」
現れた鎖によって、鉛色の巨人は捕らえられた。
それはいかなる宝具か。
突如空中より現れた鎖は、空間そのものを束縛するようにバーサーカーを封じていた。
―――全身に巻きついた鎖は際限無く絞られていき、岩のような首でさえ、その張力で絞り切ろうとしていた。
「―――これでも死なぬか。
かつて天の雄牛すら束縛したのだがな。
だが、これで終わりだ」
―――――――宝具が放たれ、
今度こそ、本当に終わった。
バーサーカーは崩れるように、空間へ溶けて行き、
全ての魔力を放出した英雄王は、透けていく体を見ながら、笑った。
「ふん、我が同じ轍を二度踏むものか。
神々に友を奪われるなど、金輪際あって溜まるか」
不遜に。
神々ですら嘲笑うように、英雄王は笑った。
「―――さあ、疾れ衛宮士郎!
疾れ仮面ライダー!
貴様の友は、その仕事を終えたぞ!」
「今度は、貴様の番だ…!
見事……自分の仕事を果たして見せろ!!」
疾れ、衛宮士郎……!!
―――――そして。
英雄王ギルガメッシュは、この世から消滅した。
――――interlude out
392 名前: 仮面ライダールート5-6 (M8z3Z2VY) [sage] 投稿日: 2004/11/24(水) 00:22
「――――――」
「つまりだ、衛宮士郎。
貴様は、仮面ライダーになんか、ならなければ良かったのだ」
剣が奔る。
罵倒をこめたライダーの剣は、かつてない勢いで繰り出された。
「――――――――あ」
その、怒涛のような剣戟を目の当たりにして。
自分はここで死ぬのだと、十年前のように受け入れた。
叩きつけられる衝撃。
流麗だった剣筋は見る影なく、ただ、力任せに打ち付けられた。
「は――――」
受けた左腕が震える。
剣を握った指は、その衝撃で折れた。
残った全精力で作り上げた青き杖も、わずか一撃で歪曲した。
「――――――――」
死んだ。
初撃で既に瀕死。ならば迫る次弾を受けきれる道理はない。
「――――――――あ」
だというのに。
心が折れかけているというのに、体は全力で否定する。
それは違うと。
ライダーの言葉を否定し、ここで死を迎えるのも拒み、懸命に訴えるように。――――顔をあげる。
……聞こえるのは剣の響きだけじゃない。
コイツは。
その一撃の度に、自らを罵倒する。
「―――何も知らない人々からみれば仮面ライダーも怪人でしかない!」
繰り出される剣を受ける。
杖が砕かれた。すかさず次を製造する。
「化け物と、怪物と、ただ只管に護りつづけたものに罵られ!」
杖も歪に折れ曲がり、存在そのものが薄れかかっていく。
……胸が、痛い。
瀑布の如きライダーの剣戟ではなく、その言葉が、衛宮士郎の心を裂く。
「この身は仮面ライダーにならなければならないという、誓いにつき動かされてきた。
護ってきた人々に裏切られても、常に独りきりでずっと戦い続けた!」
―――繰り返される否定。
それが届くたび、心は戦闘を放棄しかける。
体はとっくに、重撃に耐えられずリタイヤしたがっている。
だというのに。
そのリタイヤしたがっている体は、なお必死になって、彼を否定し続ける。
「だが、結局は夢を果たせない!
人々にしてみれば、新たな『怪人』が生まれただけなのだから!!」
「が――――!」
弾き飛ばされる。
バーサーカーもかくやという一撃は、たやすく衛宮士郎の体を弾き飛ばす。
「―――――――」
なのに、踏みとどまった。
無様に背中から瓦礫に落ちる一撃を、懸命に耐え切った。
倒れれば。
倒れれば起きあがれないと、体が頑なに転倒を拒否していた。
「ぁ――――はあ、あ、げ――――ぅ…………!」
消えかかった剣を地面に突き立て、体を預ける。
体は前のめりになったままで、起こす事さえできない。
「は――――あ、はぁ、は――――…………!!」
剣を杖がわりにして、前に倒れ込む体を両手で押さえる。
その姿は、たとえようもなく無様だ。
端から見れば、ライダーに土下座しているようにもとれるだろう。
「―――そんなだから、貴様は結局。
護りつづけてきた人間に殺される」
「なんだ、まだ居たのか『化け物』」
「お前の所為で、美綴が攫われたし、僕も酷い目にあったんだ!
なんでこんな所に、お前がまだ居るんだよ!『化け物』!」
「あ、それとも逃げようとしていたのか?『化け物』だものな、それくらいするよな!!」
――――化け物、化け物、化け物、化け物、化け物、化け物。
「『化け物』!さっさと消えちまえ、『化け物』!!」
「――――――――」
393 名前: 仮面ライダールート5-6 (M8z3Z2VY) [sage] 投稿日: 2004/11/24(水) 00:23
「――――してるのか?」
「――なに?」
「仮面ライダーになったこと……後悔、してるのか?」
「ああ、無論だ」
即答する。
――――そうか。
ならば―――
「お前は、端っから仮面ライダーなんかじゃない」
あの日。
――――――空っぽの星 時代をゼロから始めよう ――――――
「エミヤシロウが憧れた、仮面ライダーは」
何もかも、全てが死んだ、あの大地で。
――――――伝説は塗り替えるもの…今、アクセルを解き放て! ――――――
「たとえ全てを救おうとして、独りしか助けられなくても」
手を差し伸べてくれた。
――――――クウガ 熱くよみがえれ――――――――
――――――クウガ 誇りのエナジー――――――
――――――クウガ 強くあるために・・・―――――――
「誰も救うことができなくても」
それが、あまりにも嬉しくて、その姿がとても綺麗で。
――――――No Fear No Pain 愛の前に立つ限り―――――――
「罵られようと怖がられようと、次に救えると信じて」
だから、決めた。磨耗しようと、折れようと。
――――――No Fear No Pain 恐れるものは何も無い!――――――
「ぶっ倒れるまで前のめりに」
ただ只管に研ぎなおし、鍛えなおし。
――――――完全独走!俺が超えてやる!――――――
「走り続けるやつのことだ―――――!!」
そんな刃金でできた剣のようになろうと……!!
――――――超変身!仮面ライダークウガ!――――――
そして、俺はヤツを――――
1.蹴りつける。
2.ゴウラムで突っ込む。
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最終更新:2006年09月24日 15:39