381 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/08/24(木) 02:36:44
「で、ではお世話になりますわ」
と、深々と頭を下げた。
髪に隠れていたがその顔は真っ赤だった。
「じゃ、決まりと言う事で、桜、彼女の部屋の用意を頼めるかな? 風呂沸かしたら手伝うから」
「あ、はい、わかりました」
「では一宿のお礼という事で、ディナーは私の手料理と言う事でいかがでしょうか?」
「あら、貴方料理が出来るの? いつもシェフが居たように見えたけど」
「勿論、料理も貴人の嗜み、プロ並みとは行かずとも、いつでも妻となれるだけの腕前を備えていますわ」
そう言うと台所へと歩いていく。
「いや、いいのか? 仮にもお客さんなんだし、料理位なら俺が……」
「そうね……では簡単に日本式のキッチンの使い方だけ教えて頂けるかしら? 私は簡単に店を探して用意してきますので」
「いや、店なら商店街があるから、荷物持ち位手伝うぞ?」
「おおーっ! 早速共同作業ね、桜ちゃんも遠坂さんも突如として出現した強大なライバルにどうするのかなー?」
ぬっ、と対抗心を燃やした二人であり、
「?」
分からぬは一人だけ、の衛宮士郎であった。
ちなみにライダーは桜を応援しつつも面白がっているようだった。
夕食の準備こそ整ったが、夕食の時間にはまだ早いと言う事で、先に風呂に入る事となった。
「んー……バスタブというのも、いいかもしれませんわね……」
エーデルフェルトが湯面に肢体を浮かべて言った。
彼女は普段サウナである。
というよりもフィンランド人は大概サウナである。
なにしろサウナという言葉自体がフィンランド語である。
歴史は古い。
故に彼女は知識でこそ知っていたが『日本式』は始めてであった。
浴室のドアが開いた。
「ミスター? どうぞ……」「ルヴィアちゃんやっほー……?」
少しだけ時間が止まった。
当然入ってきたのは虎である。
「って、なんで士郎なのよシローウ!」
何事かと面々が集まる。
そして集まった面々の士郎に掴みかかる。
「私だってそりゃもう下宿とかそんな事じゃ驚かないさ士郎は良い子だからどんな人でも助けちゃうさそれは別に良いさー!」
がくがくと襟を掴んで前後に振る、全裸で。
「でも今日から下宿の子が一緒にお風呂はいりましょー状態なのはなんでなのさー! 一体いつの間に手を出したのさー!」
おう、脳が見事に頭蓋骨に当たってシェイクされて典型的な脳震盪になっている。
当然答える余裕も申し開きをする事も出来ない、というかそんな状態になっていたのかー?
というわけで絶賛死亡寸前状態になっていると。
「? 日本では男女一緒に入るのが通例ではないのですか?」
そんな事を口にした。
「……ルヴィアちゃん? 一体どこからそんな偏りつつも間違った知識を」
ギギギーと音がしそうな位不自然に振り向いた。
「海外に旅をするに当たってその国の文化や言語を調べるのは当然ではないですか」
うむ、実にまともな事を言っている。
「私が読んだ本では男女が一緒にバスタブに入るというのは頻出したパターンでしたよ?」
ちなみに文化を調べるにあたり彼女が読んでいたという本はほぼ全てラブコメであった。
383 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/08/24(木) 02:37:30
そして一時間後に完成したのはフィンランドの地元料理であった。
「へえ、以外なんだな、フィンランドにも生魚を食べる習慣があるとは……」
バルト海風ニシンの酢漬けを食べながら言った。
「本当はスモークサーモンのスライスが良かったのですが、見慣れた魚でしたので酢漬けにさせて頂きました」
出された全ての料理を一口ずつ食べて「料理の腕は認めざるを得ない」という表情の二人。
虎は夕食がパン、それも食べ慣れないライ麦パンである事に違和感があったようだが、料理を食べて
「合格っ!」
とフィンランディア(ウォッカ)のボトルを一気に飲み干した。
「あら、ミス藤村、イケる口ですわね、強ーいお酒ですのよ、それ」
そう言いつつルヴィアは007にも出演したアイスバレスのカクテルを飲んでいた。
「はっはっはー! 酒なんてジュースと同じだーい! しろーも飲むんだーい!」
「クールに、かつ一気にどうぞ、ミスター」
そう言われてくいっと飲んだ。
「うっ……結構強いぞこの酒、良く一気に飲めるな、藤ねえ……」
「だっはっはー! コレ気に入っちゃったー、あとで持ってきてくれるー?」
「ええ、良い店を知っていますからその店に手配しておきますわ」
夕食という名の宴は夜まで続いた。
「縁側というのも以外と良い物ね……」
宴も終わり、水の入ったグラスを手に彼女は酔いを覚ましていた。
ちなみに虎は酔いどれ虎となって茶の間で倒れていた。
暴れたあとでも毛布が掛けられていたのは家主の良心である。
他の面々もそれぞれの部屋に戻り、衛宮邸の時間は静かに流れていた。
「ルヴィア」
「あら、どうしたの?」
遠坂が、宴の中の酔った表情をどこかに捨て去ったかのように、静かに立っていた。
「何の為に日本に来たの? 本当に部門長に言われただけなら召使いの一人にでも任せればいいじゃない」
風が出てきたのか、庭草が揺れた。
「その貴方が召使いも連れずに単独で日本に来た、その理由を聞かせて貰える?」
「……酔っているようで、以外と冷静なのね、貴方」
「……貴方も私と同じ目的を持っている、と考えて良いのかしら?」
「ええ、そうよ、私も貴方と同じ、聖杯戦争に参加するよう要請されたわ」
水を一気に飲み干し、グラスを縁側に置いた。
「魔術師として質問するわ、敵対の為? 共闘の為?」
右手を突き出す、敵対するなら容赦はしないと語っていた。
「勿論、共闘の為よ、私と敵対しうる人材なんてそうは居ないもの、私と貴方が争ったら得する者が増えるだけよ」
「なるほど……最後の二人になるまでの共闘ね、悪くない条件よ、お受けするわ、エーデルフェルト」
「よろしく、ミストオサカ」
握手しようとお互いが右手を差し出す。
その瞬間。
B:マナが濃密になった
A:虎が暴れ出した
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最終更新:2006年10月30日 00:54