673 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/16(土) 04:28:57

「ドラアッ!」
拾っておいた剣を投げつける。
だがそれが届く前に、ランサーが剣の先端を叩き砕き、男の外套を掠めて壁に命中して転がる。
そしてランサーは砕いた直後に槍で仗助の喉を狙う。
だがその一撃は、シュリフのステッキによって軌道を変える。
「さて、ではサーヴァントはサーヴァント同士で争うとしようか」
ダービーハットを片手で押さえたまま、不敵に笑う。

「ほう、それならマスターはマスター同士で殺し合うかね」
赤い外套を一息で脱ぎ捨てると杖を取り出す。
「君はいいのかね?」
「別に良いぜ、おりゃマスターだけど手品師じゃねーからよぉー」
「その物言い……実にグッド! だが態度は実に悪いね、年長者は敬う物だよ」
「例えそうでもよー悪党にはキチッとブッ飛ばしておくのが正義って奴だぜ」
「そうかね、では"ブッ飛ばして"みたまえ!」


対峙するサーヴァント二騎。
「マスターを信頼しているのかね」
紳士的に問う。
「二択ならばその通りと答えよう、貴君はどうか、紳士よ」
「信頼はしていないね」
紳士は笑う。
「だが"確信"はしているよ、私のマスターが勝つとね」
「それは大変だ、では、私の方は勝ってみせねばな」
槍兵も笑う。
槍と杖の戦いが始まる。

金属音が響く。
槍を叩き落としながら、杖の先端で喉を狙う。
杖を叩き落としながら、槍で心臓を狙う。
「紳士、貴君何者だ」
槍兵が問う。
「君こそなにかね、ランサーかと思ったが『宝具でもない槍』を用いるとは、迷彩かね」
紳士が問う。
「なに、有名すぎるのも考え物でね」
互いに笑う。
「お互い本気ではなさそうだが、本気でないなら」
杖を左手に持ち替える。
「私が先手を取ろう」
突き出されたそれは金属である。
それは金属を発射する筒である。
それに詳しい者ならば、その姿を見ただけで驚喜するだろう。
片手で突き出されたバントライン・スペシャル。
無造作に突き出されたその狙いは、眉間。
瞬きも許さぬ6連射。
「ほう、今のを回避する、さすが敏捷性に長ける槍兵」
「ふむ、銃兵か、紳士にありながら銃を持つとはな」
右後方へ飛び下がり、構えすら解いた。
「なに、これも護身用でね、私の時代の必需品だよ」
「ふむ、嫌な時代だったのだな、私の時代には合戦を左右する事はそうは無かった」
「それは良い時代だ」
スピードローダーによる再装填に手間はそうかからない。
再び拳銃はホルダーに仕舞われた。
「だがそれは貴君の宝具ではないだろう?」
「ふむ、それも見抜くかね、だが、切り札を見せるのには、死にかけるか許可がないとね」
「お互い、有名人は辛い物だな」
「まったくだ」


地面を杖で引っ掻く。
彼の魔術はただそれだけで完成する。
掻かれた軌道に沿って黒い衝撃波が生まれた。
単純にして明快、これが彼の得意とする攻撃魔術である。
衝撃波は砕かれた剣の先端を吹き飛ばしながら仗助に迫る。
「おいおい、こんな"スロー"な技じゃ、サーヴァントどころか俺にも余裕で回避されちまうぜ? オッサン」
ひょいと避け、その後方で壁が砕ける。
「その通り、こいつは実にスローな技だ、だが、こいつでどうかね?」
敗因はその瞬間に攻撃しなかったことだというように。
杖の先端が獣の爪のように展開する。
その数は、優に20を超えていた。
そうして発生する黒の衝撃波は、面の衝撃波となって仗助を襲う。
展開した数に応じた物なのか、速度も上がっていた。
「うおっと」
横に飛び去る。
だが次の瞬間には次の波が襲いかかる。
「うおおっ……」
近付くことさえ許さぬ連撃。
彼自身の能力は近接戦闘が原則だ。
故に近付くことが出来ねば力を完全に発揮することは出来ない。
「そらそらそら!」
「うっ……く」
爪先が巻き込まれ、体勢が崩れる。
魔術師は、勝利を確信して笑う。
そうして、ようやく仗助が笑う。


睡:「治す」それだけを口にした。
眠:「グレート……ベストポジションだぜ」体勢が崩れたまま、敵を指さした。
欲:「お前の次のセリフは『勝った! 死ねい!』だ」彼の父親のセリフを真似した。

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最終更新:2006年09月16日 13:06