682 名前: 白と赤 ◆ANW.KzCbpw 投稿日: 2006/09/16(土) 15:15:38

  的:ブカツって何? 学校というのはどういう場所だろう


 そうだ、学校という場所に行ってみよう。
 知識として、学校という単語の意味はわかる。
 それほど興味があるわけではないが、暇つぶしにはちょうどいいだろう。
 そうと決まればあとは行動するのみ。
 大体の地理は把握しているが、実際に今から行く道が学校への最短距離かはわからない。
 まあ、いいか。そんなことを思いながら、てくてくと歩いて行く。

 十字路の付近に近づくと、巨大な魔力の塊が接近していることがわかった。
 自分のバーサーカーではない。
 こんなときにサーヴァントに会うとはついてない。
 魔力を一般人に偽装し、自身の令呪を意識しながら感覚を延ばす。
 これなら、余程のことが無い限り簡単にやられることはないだろう。
 ペースを落とさず歩いて行く。

「———ぅ付いてこられると迷惑だって、はっきり言わなくちゃわからないのか」

「—————————」

 なにやら言い争っているようだ。
 話はわからない、マスターが悪いのか、サーヴァントが悪いのか。
 どちらにしろ、その問題を外まで持ってくる時点で、自身の脅威となるほどのものではないだろう。
 だから、通り過ぎようとした。
 ——すくなくとも、相手の顔をみるまでは。

「だめよ、お兄ちゃん。サーヴァントはちゃんと躾けなきゃ」

 二人の視線が自分に集まる。

「こんにちはお兄ちゃん。私はお兄ちゃんを知っているけど、お兄ちゃんは私を知らないから、はじめましてかな」

 思ったより、すらすらと言葉がでた。
 あまり上手く喋れないかと思ったが、予想を大きく上回る喜びにより驚きと緊張は掻き消えた。
 もしかしたら自分は笑っているのかもしれない。

「な、ええ———!?」

「士郎、下がってください。敵マスターです」

 驚くマスター、武装するサーヴァント。
 彼女の兄であり弟でもある少年は、口をパクパクしていて状況を掴めていない。

「もう、本当に躾がなってないんだから。
 誰かに襲われたわけでもないし、夜でもないのに武装するなんて。しかも私が結界を張らなきゃどうなってたか」

 少女がみてるのは少年だけ。
 その間に立ち塞がる騎士は少女にとって、なかなか立派な少年の道具という認識でしかない。

「もう一度言うね、はじめましてお兄ちゃん」

「え、あ、うん。はじめまして」

 歌うように口調で言葉をかけ、それにしどろもどろになりながらも少年がお辞儀をしたのを見て。少女は満面の笑みを浮かべる。
 少年は落ち着きはしたようだが、いまだ状況を理解していない。

「えーっと、どちら様で?」

「士郎。サーヴァントは連れていませんが、あの少女はマスターです。警戒を」

「え? あの子がマスター?」

 危険ですと、諌めるサーヴァント。
 信じられない、と目を見張る少年。
 それをみて、くすくすと笑う少女。

「申し遅れました。私の名前はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン、聖杯の魔術師アインツベルンのマスターです」

「でも、失礼よね。夜じゃないと戦っちゃいけないのに」

 ねえ、と笑いかける。
 最初の台詞に弁当が入った袋を持ちながら警戒をしていた少年が、少女の後の言葉でなんともいえない表情となり。

「……戦いに来たんじゃないのか……?」

「なに? わたしに殺されたいの?」

 その質問に。少し不機嫌になり、笑顔の質を変えながら答える。

「……ふぅん。よくわかんないけど、そういうんならわたしはいいよ。予定がちょっと早まるだけだもん。ここで死ぬ?」

「サーヴァントも連れず、そのような大口を叩くとは。余程自身があるとみえる。しかし、死ぬのはわたし達ではない、ここで死ぬのはあなただ、魔術師」


 少女の幼い殺気に少年の騎士が一歩踏み出し。


 Ⅰ 「やめろ! セイバー!!」少年が叫んだ。
 Ⅱ 「——■■■■■■■」赤い外套が翻った。

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最終更新:2006年09月16日 16:29