791 名前: ブロードウェイを目指して ◆bvueWC.xYU [sage] 投稿日: 2006/09/18(月) 13:05:05
――ここは、
意識とは別に体は目的地を見据えて迷うことなく歩いていく。それと同時にこれが夢なんだと気づく。
ずんずんと進んでいく視界の先にはどこか見覚えのある体育倉庫だった。
――確か……中学の頃の?
俺はポケットから何かを探ってソレを出した。どこにでもあるカッター、多分筆箱の中にでもあったのをポケットに入れていたのだろう。
夢の中の俺はキチキチ、と刃を長めに出して眼鏡を外した。
――あぁ、そうか
何の抵抗もなくドアに突き刺さるカッター。
――これは、いつか弓塚に教えてもらった……
そうして、俺は中に閉じ込められていた「彼女」を探そうとして…………………………目が覚めた。
目覚めは、決してよくはなかった。
眼鏡をかけてしばしついさっきまで見ていた夢を吟味する。普段夢を見ないので妙に引っかかる。何が、一体何が…………。
「志貴様、お目覚めでいらっしゃいますか?」
「………………あぁ」
翡翠のノックと声で意識がそちらに移る。俺は少しばかり反応に遅れて返事をした。
「失礼します。志貴様、昨晩はよく眠れましたか?」
「ん……どうだろな、結構遅くまで考え事しちゃってたみたいだから」
曖昧な返答に翡翠はきっと困っているだろうと思っていたのだが、その翡翠の口から予想外の言葉が出てきた。
「志貴様もですか。私もこれからの事を思うと少し……落ち込むというか緊張するというか」
「え?」
翡翠のイメージには程遠い単語が二つほど聞こえた。「落ち込む」?「緊張する」?
しかし、しばし考えてその原因を探れば十分に納得いくものだった。
「あぁ…………劇の話か」
「はい……どうしても他の人に見られているというのを意識すると……」
昨日の稽古を思い出したのか、翡翠は紅潮させた顔を見せまいと俯いてしまった。
「はは、大丈夫だって。俺だって翡翠と似たり寄ったりなもんだし。まだ練習は始まったばかりだしこれから慣れていけばいいんだよ」
「…………そうでしょうか」
「そんなもんだよ。さ、秋葉が待ってるんだろ? 着替えなくちゃいけないから」
そう言ってやんわりと退出を促す。翡翠はまだ照れが残ったままの表情で会釈をして部屋を出て行った。
いつも通り学校へ行き何事も無く放課後へと。そして、今日の稽古が始まる。
「あ」
集合場所の教室に移動する途中、廊下で弓塚の後ろ姿が目に入った。一声かけようかな。
「おーい、弓塚」
「あ、遠野く……」
ツインテールがぴく、と反応して次に笑顔で振り返る。が、何か失敗したような表情を一瞬だけ見せると、弓塚は緩んだ頬を引き締めて、
「急がないと集合遅れるよ」
「…………え?」
言うが早いか弓塚は何の表情も見せないまま再び踵を返す。
冷たい目、冷たい声で弓塚は俺を置いていくようにして先に進む。俺は想定外の反応にどうしていいか分からなかった。
何か悪い事をしたんだろうか。俺は原因が知りたくて弓塚に尋ねようとするが、背中からのオーラで近寄りがたい。
俺は……
紅.それでも弓塚に今の態度について質問する
赤.いや、もしかしたら何かあるのかもしれない。様子を見よう
朱.触らぬツインテールにタタリなし。今日一日放っておく
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最終更新:2006年09月19日 00:23