786 名前: 言峰士郎-3 (eYkk4Fu6) [sage] 投稿日: 2004/12/05(日) 21:10
そう、親父から聖杯戦争について簡単な説明を受けている時だ。
ふと……何を思ったのか唐突に、
「―――士郎。ハサン・イブン・アル・サッバーハという人物を知っているか?」
親父は、そんな言葉を口にした。
「いや、知らないけど……誰だ、ソイツ?」
「イスラム教の異端組織、『暗殺教団』と呼ばれる組織の創始者として知られている人物だ。
いや、正確には――人物達、と言うべきか」
「?」
訳がわからない。
「ああ、いや……アサシンのクラスとして必ず召喚されているのは『彼ら』なのでな。
少し説明をしておいてやろうと思っただけだ」
「へえ……親父が親切心を持っているとは露ほども知らなかったな。
で、ソイツはどんな英雄なんだ?」
「英雄ではない。反英雄だ」
――――ハサン・イブン・アル・サッバーハ。
アサシン、ハシーシーン、ダーイ、フェダーイー、山の老人等、数々の異名を持つ、十世紀末の中東において埋まれた、シーア派イスラム原理主義ニザール派の創始者である。
彼らは自分たちに、迫害・圧迫を加えた敵対者に対する対抗手段として暗殺をおこなっていた。
それ故、暗殺教団と恐れられていたのだが――その戦果というのは、実に華々しい。
犠牲となった要人は両手の指に両足を加えても足りる事は無く、時の宰相や十字軍の将校を始め、あのイスラムの英雄サラディンさえも標的にしたという。
さらに言えば、暗殺者を意味する英語の普通名詞『アサシン』は、大麻吸引者『ハシーシーン』を語源としており、『アサシン』のクラスとしては申し分のない――それこそ、最も相応しいと言える人物なのだという。
いや、親父の言葉によれば『人物達』と呼ばなければならないだろう。
ハサンの名は、代々の指導者に引き継がれていったのだから。
少年であったり青年であったり壮年の男であったり、そして時には女性だったのかもしれない。
『ハサン』になった時点で、その名前に意味は無く、与えられた『使命』を遂行しなければならない。
故に、聖杯戦争に召喚される『ハサン』は、『ハサン』の中から選ばれた人物なのだという。
そして、親父の言葉を信用するなら目の前の人物はハサンなわけで――――って。
「イスラム教徒かよ……!」
異教徒だ、異端者だ。元は同じ神を信じていたとはいえ、代行者見習いにとっては敵対者でしかない。
「令呪使って改宗させるかな――」
「それは勘弁願いたい、魔術師殿」
「―――――――――」
「―――――――――」
「―――――――――」
「―――――――――」
「――――――――――普通に喋れるなら最初から喋れ!」
「魔術師殿、召喚されたばかりで上手く声が出なかったのだ。許して欲しい」
そんな風に言う、目の前のアサシンは――――
1.ぶっちゃけ言うと、女の子の声だった。
2.男の声―――だと思う。
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最終更新:2006年09月24日 18:18