440 名前: 言峰士郎-17 (eYkk4Fu6) [age] 投稿日: 2005/03/08(火) 23:53:48

 学校から帰宅する。アサシンは現界させてはいないが、とりあえず俺の部屋で待機してもらうとして――ついでに俺は制服から私服のカソックへと着替えておく。首にはロザリオだ。俺が着替えている間、アサシンは何故か知らないが窓の外をじーっと見ていた。良くわからん。
 そして、行うことは一つ。恐らくは寝てるか悪巧みしてるかマーボ食ってるだろう筈の糞親父の自室へと向かい、思いきり扉を蹴破った。
「おいこら馬鹿で阿呆な糞親父、サーヴァント召喚したからさっさと受理しやがれ!」
 ――糞親父がどんな人間か考えれば、俺がやらかした失敗は、きっと仕方の無い事だったのだと思う。
「……そうか。コトミネ、君は馬鹿で阿呆な糞親父だったのか?」
「……どうもそうらしい」
 鈴を転がすような澄んだ声と、何時もの地獄から聞こえて来るような低い声。
「――へ?」
 顔を上げれば、そこには美男――と見紛うばかりの美女の姿。
「士郎、私の友人であり、言っておいた客人のバゼットだ。
 バゼット、そこにいるのが――私の義理の息子、士郎だ」
「――どうかよろしく」
 何時もの嘲るような笑みと礼儀正しい微笑み。
 つまり。
 これがバゼット・フラガ・マクレミッツと言峰士郎の、ファーストコンタクトだった。
 ガッデム。


「しかしな、君――シロウ君。気持ちはわかるが、父親を『糞親父』呼ばわりをするのは止めたまえ。一応、代行者見習いなのだろう?」
「馬鹿で阿呆は否定しないのか」
「ああ、それについては君と同意見だな」
「言峰、否定はしないのか?」
「彼と彼女の間では正当な評価なのだろう。
 正しい意見は受け入れなければならないと思わないか、ギルガメッシュ?」
「なるほど。確かに我も覚えがあるぞ。
 エンキドゥから……まあ、色々いわれたからな」
「――しかし、言峰。久しぶりに会って言う台詞でもないが……。
 いくらなんでも、このマーボは辛すぎないか?」
「ああ、バゼットさん。その意見は無意味だ。
 この糞親父の主食は激辛マーボだからな」
「それは我も同意見だ」
「私も同意見だ。マーボは美味い」
 頷く糞親父に周囲から妙に寒い視線が突き刺さる。
 夕食は、久しぶりに会った友人をもてなす為――だとかなんだとかで糞親父が作った……というか作らせた。俺が作ってやっても良いのだが、稀には自分の手も動かせと言うのだ。友人の前だろうに。
 本来ならアサシンも連れて来たいのだが――彼女は大勢の前での食事は苦手らしい。
 後で料理を作って持っていってやろう。約束だし。
「しかし、言峰。お前が養子を貰ったと聞いた時は、正直言って驚いたぞ?」
「意外だったかね?」
「意外もだが――心配だった。きちんと子育てできるかどうか、だとかな。
 だが……口は悪いが、なかなか如何して良い息子じゃないか」
「――口が悪くてすみませんでしたね」
 料理の最後の一口を放りこむと、苦笑混じりに言って、俺は立ちあがる。
「む、言峰の子よ。どうした?」
「積もる話もあるだろうから、俺はちゃっちゃと引っ込むんだよ。
 金ぴかも飯、食い終わったら部屋戻って寝るべし」
「金ぴかと呼ぶなッ」
 睨んで来るけど金ぴかだから怖くない。
 ニヤリと笑って手を振って、俺は食堂から退出した。
 中庭に出る。カソックの内側から紙巻きを引っ張りだしてライターで火を灯して一服。
 甘ったるい香りのする煙を胸一杯に吸い込んで吐き出した。
 この時期にやって来るのだから、バゼットさんもマスターなのだろう。で、さっきの俺の失敗で彼女には俺がマスターだという事がばれている。
 なのに何もしない、言わない。即座に殺すこともできたのに。
 理由は――フェアじゃないのと、何よりも友人の息子だったからなのだろう。
「ククッ……」
 思わず、笑ってしまう。
 お堅く見えるように振舞っている彼女。男装も、そのイメージを助けるためなのだろう。
 だけど。
 良い人なのだ。結局は。
「――美人だしなあ」
 呟いて空を見上げる。星が見えた。凄く綺麗だった。
「……さて、どうするかね」

1.神様の前で一服するか、礼拝堂へ
2.アサシンの晩飯を作ろう、厨房へ

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最終更新:2006年09月24日 18:33