916 名前: 言峰士郎-21 [sage] 投稿日: 2006/03/08(水) 04:32:14

 ――――で、窓の外。
 全力ダッシュしてる蒼い槍兵と、そいつに抱えられてる隻腕の女の姿があった。
「ジーザス!神は死んだ!」
 ああもう考えなくても神に祈らなくても三人集まらなくたって文殊の知恵だ畜生っつーか仏教帰れ!
 この文明万歳の現代社会に『槍抱えた男』なんてのが聖杯戦争以外で歩きまわってて溜まるかってんだ畜生め。
「――どうするのだ、代行者殿?」
 ハサンのやけに冷静な声。それで一気に思考を冷やそう。
 ポケットから引っ張りだした紙巻きを口に咥えて、息を吸う。
「ベラボーに状況がわからねえ」
 あの糞馬鹿阿呆間抜親父は何やってたんだ畜生とか。
 てかバゼットさんいきてんのとか。
 つーか青タイツ野郎がバゼットの腕叩き切ったのかどーか。
 だが、けど、しかし、だ。
 思考時間はゼロコンマ5秒。何処ぞの宇宙刑事の変身速度にだって負けやしねえ。
「こんな状況で何もしなかったらジーザスにケツの穴掘られちまう!」
 ―――――そう、バゼット・フラガ・マクレミッツは良い人だった。
 多くは知らない。が、あの根性捻じ曲がった親父の友人やってたんだ、良い人に決まってやがる。
 そして一方言峰士郎は、と言えば。
 たった数十分しか話したことのない相手であっても。
 そういう人間を見捨てられない程度には。
 ――――認めたくないことに、お人よしなのだった。
「――ならば、さっそく行動に移るとしよう」
 何処か楽しげなハサンの言葉。そう言って彼女が窓を開けたのを見て、俺はニヤリと笑う。
「OK、ハサン……先行してくれ、俺は自力で追っかける」
「承知!」
 そう言って、ハサンが窓枠に脚をかけ、夜の闇へと飛んだ。
 その後に続いて、俺も窓枠に脚をかける。
 ライターでドラッグに火をつけ、甘ったるい煙を肺一杯に吸いこんだ。んな事をシラフでできるかってんだ。
「あー、神様イエス様ジーザス様マリア様、えー……あと色々いすぎて覚え切れない聖人の方々。
 どうか俺を護ってください。っていうか魔術失敗して潰れたトマトになるバッドエンドだけは勘弁を」
 ―――撃鉄を落とし、脚に意識を集中。二七本の魔術回路から、笑っちまうほど少ない魔力が両足に叩きこまれる。
 言峰士郎100の必殺技の一つ『強化』の魔術である。
 畜生、あかいあくまの野郎――失礼――アマならもっと重力制御だのでサッサと行けるってのに!
 目を一瞬だけ閉じ、そして開く。
「HAVE A NICE FRIT!」

 ――――そして言峰士郎は。
 聖杯戦争へと、飛びこんだ。


 ――――地面に叩きつけられた両足を踏ん張って、そのまま全力で駆け抜ける。
 畜生。やっぱ言峰士郎の魔術じゃ速度がでねえ!つか痛ぇよ、糞!
「ガッデム!テメエ俺の脚だろうが、根性見せやがれ!」
 さもなきゃ切り落と――すと俺が大変なんでやらないが。チキンめ。

 役立たずの魔術――だったが、それでも少しは役に立つ。
 ハサンが追跡していた事に気付いたらしい槍兵は脚を止め、此方を鋭くにらみつけていた。
 俺――否、ハサンを迎え撃つつもりらしい。
 障害は振り切るのではなく、叩き潰す。いいね、その性格。最高。惚れた。抱いて!
 ――とはいえ、テメエの相手は彼女じゃねえ。
 「――ハッ、良く見ろよ、坊や……ッ!」
 そう叫ぶなり、俺は―――……

 い:黒鍵投影……ッ!投擲する。
 ろ:銃剣投影……ッ!切りつける。
 は:鉄拳強化……ッ!殴り飛ばす。

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最終更新:2006年09月24日 18:39