929 名前: 言峰士郎-22 [sage] 投稿日: 2006/03/08(水) 22:48:53
ガチン、と撃鉄を落とす。
両足に溜めこんでいた魔力を一気に解除。膝が笑って崩れそうになるのを無視。むしろそのまま前のめりにぶっ倒れる勢いで。
ついで、その筋力を両拳に叩きこむ。魔力の急激な移動に耐えきれず、腕の血管が数本破裂するが無問題。
向こう槍持ってんだぜ、槍。気にしてられるかってんだ。
腕の筋肉を、文字通り『引き絞り』――――――……。
「良く見ろよ、坊や……ッ!」
――こうして、
言峰士郎の聖杯戦争が、始まった。
「――邪魔すんじゃねぇッ!」
一撃目は、あっけなく槍兵によって防がれる。
振るわれた槍の柄によって拳を弾かれた。音よりも速い。そんな印象。
「おい坊主――……俺は、テメエにかまってる暇は無ぇんだ。
見逃してやる。死にたくなけりゃ、とっとと逃げろ」
――――見たモノを、そのまま殺せる視線。
大気が――空気中の魔力が全て凍りつく。
それだけの殺気。それだけの殺気を出せる実力。
――コイツが英雄か……ッ。畜生、とんでもねぇぞ、糞。
逃げたい。言われなくてもとっとと逃げたいです。マジで。
「――けどまあ、悪いけど」
―――だけど。
「俺も、そーいう訳にゃあいかないんだ」
ニヤリと笑って、息を吐き出す。
――吐き切ったところで息を止め、数秒耐えてから、フッと腹の力を抜く。肺の中に、酸素が自然に入りこむ感覚。
中国拳法独特――なのかは知らんが――体内の『流れ』を正常に戻すことで、傷を癒す呼吸法。
魔術回路の連続行使で乱れ切った『流れ』。コイツを元に戻さない事にゃあ、一瞬でぶち殺されちまう。
ま、元に戻したって一瞬でぶち殺されるのは確定っぽいけどさ。畜生め。
「その人は、俺の客人でね。怪我した上に怪しい奴に拉致されてるのを見捨てたら、
ジーザスにケツを掘られちまう」
「―――――……なんだと?」
――殺気が高まる。なんか拙いこと言ったんだろーか、俺は。
ブンと振るわれる赤い槍。あ、ヤベエ。ケツに穴開かなくても胸に穴開きそう。
その穂先が此方に向けられる。
先ほどまで向こうが持ってた『見逃してやる』雰囲気が、完膚無きまでに消滅してるのはきっと気のせいじゃない。
――マズイな、俺きっと死ぬ。
「テメエ、アイツの仲間……ってわけか。なら、逃げなくても良いぜ。
それならどの道、俺が殺す筈だからな」
――――瞬間、槍が動いた。
不可避の槍。英雄の槍。ぶっちゃけ当たるとマジ痛そう。
そんなくだらない事を考える余裕があるんなら、とっとと避けろと自分に呆れながら。
「代行者殿…………ッ!」
聞こえて来る声に申し訳無い、と思う暇も無く、ぷっつりと意識を消した。
そりゃまあ、無理も無い。
い.自分の心臓に槍が突き刺さってるんだもんなあ。
ろ.鳩尾に槍の柄を思い切り叩きこまれりゃあなあ。
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最終更新:2006年09月24日 18:43