38 名前: 言峰士郎-27 [sage] 投稿日: 2006/03/10(金) 19:08:32

「――――言峰くん、何をやってるのかしら?」
「うおわあぁぁっ!?」
 下の方から聞こえてきた声に、ドンガラガッシャンとあっけなく俺は落っこちた。
 だからほら、頑丈な脚立でも落ちる時は落ちるのである。ガッデム。
「――なんだ、遠坂凛じゃないか」
 ――って、遠坂凛ですか。
 あかいあくまですか。
 なんか背後にドドドドドドドッ!とか効果音が描いてるんですが。
 しかもこっち仰向け、向こうスカートなのに何も見えないとはどーいう事かと。
「学校に結界がはってあるっていうのに……なんで言峰くんは遊んでいるのか、教えていただけますか?」
 にっこり笑う、その右手。
 なんか宝石握ってるよーな気がするのは気の所為でしょうか。気の所為じゃないです。デス。DEATH。
 大佐!大佐ー!
 《駄目だスネーク!タイムパラドックスが起きてしまった!》
 いや、意味わかんないから。わりとテンパってるようです、俺の脳内大佐。
「い、いや、こう、ほら。
 一般人にできない事をやってみるのに痺れて、憧れてたもんで」
「一応聞いておきましょうか―――――――遺言、ある?」
 ダ、ダメだ!コントローラー差し替えても勝てねえ!
「あ、う、ええっと、すみません、ごめんなさい、謝りますから許してください」
 インシャラーと両手を上げて降参の意。
 つってもまあ、地面に仰向けなので万歳してるだけのような気もするが。
「まあ、士郎が馬鹿なのは、本当に昔からよ―――――――――く、知ってるけど。
 聖杯戦争が始まってるのに、そんな風に気を抜いてると……死ぬわよ、貴方」
 うっかりさんに言われたくないやい。
 いやま、マスター同士だってのに心配してくれる辺りは感謝感謝なのだけれど。
「いやいや、息抜きは大事だぜ、遠坂凛。
 ジョークの無い人生は砂を噛むようなモンだ――と聖書にも書いてある」
「何処の聖書よ、それは」
 俺の聖書だ。
「それで。
 念の為聞いておくけど、士郎じゃないわよね、アレ張ったの」
「以下同文。つか、俺はんな事しないってーの」
 どんな結界だか知らんが、巻きこまれたら溜まったもんじゃないしな。
「私も同じ。――それじゃ、聞きたいことも聞いたし、先に教室行ってるわね」
 くるん、とスカートと髪を翻して歩き始める遠坂凛。あの絶対領域をいつか打破してやる。
 のっそりと上半身を起こすと、だいぶ向こうまで行った凛が、もう一度此方を向いた。
「そう言えば――士郎って、思ったより頑丈なのね。
 落っこちてきたとき、死ぬんじゃないか――って思って、少し焦ったけど」
「―――――は?」
 言いたいことはそれだけだったのか、何か言おうとした時には、彼女の姿は見えなくなっていた。
 …………上を見上げる。脚立の、自分が落っこちた位置は、だいたい校舎の二階くらい。
 なるほど。打ち所が悪ければ死ぬかもしれない。まともに落ちたって痛みにのたうち回るだろう。
 ―――――自分は、どうだったんだ?
「…………………」
 自分の身体。十数年間使い込んだソレが、なんだか他人のモノ――否、得体の知れない何かのように思えて。
 ありえねえ、と言峰士郎は首を横に振った。
「……さて、遅刻したか無いし、とっとと教室に行くかな」
 さすがに今から再挑戦しては遅刻になっちまう。溜息混じりに立ちあがると、俺はその場を後にした。



 ――――チャイムの音で目が覚めて。
 立ちあがって気をつけて礼。さよーなら。
「ん――あー……。ベラボーに眠ぃ」
 ゴキゴキ、と肩と首を捻る。どーも身体が変なんだよなあ。
 幸いなことに今日が土曜日で良かった。この後、午後の授業があったりすると大変だね、本当。
「おーい言峰、一成、昼飯食おうぜー」
「む。なんだ、間桐慎二。またイタリアンか?」
「良いじゃん、美味いし」
「どうもなあ。パスタばかり食べていると、飽きないか、さすがに。
 俺は久し振りに焼肉でも食べたいと思ってるんだが」
「ゲッ。一成、お前坊主だろ。肉食べちゃダメだろうが。
 言峰はどうするんだ?」
「いやま、俺は魚のフライとポテトだけありゃ満足だから」

 ゲェー、とか顔を顰める慎二と、イギリス料理かと渋面の一成。失礼な奴らめ。
 イギリス料理は不味いとか言われるが、そーでも無いのだ。うん。
 グレービーソースとソーセージとマッシュポテトとか美味いってのに。

 ま、それはともかくとして。

 い.そうそう、放課後はイリヤ先輩に付き合う約束だったっけ。
 ろ.結界が気になる。少しうろつき回ってみるか。
 は.身体の調子が気になる。さっさと帰るか。

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最終更新:2006年09月24日 18:49