59 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/09/24(日) 19:39:20


「さっき言ってた『浮気者』ってのは一体どういう……?」

「……っ!?」

 『浮気者』。
 背後からの衝撃……多分飛び蹴りかなにかだと思うが……その間際に、水銀燈が放った一言。
 直後に激しく脳を揺さぶられたくせに、その言葉はしっかりと耳に残っていたらしい。
 ……いや、だからこそ余計に鮮烈に頭に焼きついたのか?
 ともかく、いきなり投げつけられた『浮気者』という言葉が気になって、そう尋ねてみたところ、水銀燈は、ぴた、とブーツの動きを止めてしまった。

「あ、貴方は私の下僕だと言ったでしょう?
 だから他の女にホイホイ付いていった、その軽さに腹が立った。
 それだけのことよ」

「あ、え……?」

 ぷい、とそっぽを向いて(いや、角度的に俺からは見えないけど、恐らく向いたのだろう)理由を口にする水銀燈に、はて、と首を傾げる俺(これまた動かせないけど、心情的に)。

「……なに? 何が言いたいわけぇ、士郎?」

 すると、途端に上から聞こえてくる声の温度が3度下がった。
 あ。
 まずい。

「もしかして、私がやきもちを焼いてやってきたとか、そういうことを言いたいの?
 そんなお馬鹿なことを言うのは一体どのお口? ここ? ここかしらぁ!?」

「い、言ってないし思ってもいないっ!!
 そしてそこは口ではなく後頭部……痛っ!? いや、むしろ熱っ!!」

 おおお俺の頭を踏みにじる脚の動きが3倍速にっ!?

「そうね、気になってメイメイに監視をさせてみていたら、案の定、あっさりと色香に釣られてしまっているようなお馬鹿さんですもの。
 そんな下僕にはきちんとした躾が、必・要・よ・ね・ぇ?」

「あづづづづづづっ!?!?
 頭が! 頭が焦げるっ!?」

 ……水銀燈が開放してくれたのは、俺の頭からいい加減に黒い煙が立ち上り始めてからしばらく後のことだった。

「……今度またおかしなことを考えたら、その首切り落として鴉の餌にしてあげるわぁ」

「さ、サー・イエス・サー、マイマスター……」

 頭の後ろから焦げ臭いものを感じながら、よろよろと立ち上がる。
 うう、髪の毛がどうなっているのか確認しようにも出来ないポジションを……。

「さて、と……」

 俺の惨状には意も介さずに、頭の上から足をどけた水銀燈。
 プレゼントボックスの山の頂を見上げると、そこに居る雛苺と氷室を見据えて――。


α:「お久しぶり。ようやく会えたわね、雛苺」と微笑んだ。
β:「随分いい格好になってるじゃない、あの女」と嘲笑った。
γ:「さあ、さっさと帰るわよ、士郎」と興味無さそうに踵を返した。

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最終更新:2006年09月24日 20:23