609 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/08/27(日) 02:25:55
トニオが、桜の腕を掴もうとした。
現在、衛宮士郎と間桐桜は恋人関係にある。
だから、彼の腕を掴んで何をするのか問いただしたかった。
故にそれは刹那的な早さで。
しかし彼はそれ以上の早さで。
一方は掴もうとし、もう一方は振り払おうとした。
その結果。
トニオ・トラサルディーは間桐桜の腕を掴み、弾き飛ばされた衛宮士郎の腕は間桐桜の胸を掴んでいた。
それはもう鷲掴みと言っても良い。
胸ではなく頭であればアイアンクローとなる位の全力の力を逸らされて、今、胸を思い切り掴んでいた。
「——え?」
「あ——」
思考が停止していたのは一瞬だけ。
「オー、スイマセン」
声が合図となり、衛宮士郎は絶叫と共に胸から手を離し、間桐桜は一瞬で俯いて真っ赤になった。
その様子を見ていて黒い尻尾を生やしたのはあかいあくまとどりるあくまの二人であった。
「あらあら、以外と積極的ですわね、ミスター」
「以外と屋外でもそう言うプレイがお好みだったのかしら?」
ねー、と二人のあくまが目線を合わせている。
「え、あー、う、こ、これ、ちが」
それはもう見事な慌てふためきぶりであった。
「先輩が望むのなら……そう言うのも……」
こら、そこ、何を言っている。
「アハハ、スイマセン、皆さんご友人かと思ったらカップルが成立してルようですネ」
もう一度笑いが起きる。
笑いの真ん中にいる二人は赤くなり通しだが。
笑いが収まるのを待って彼はこう言った。
「……失礼ですガ、二年程前まで毒を常飲シていたりしませんでしたカ?」
笑いが止まった。
「それに昨日トテモ心配ナ事がアリマセンでしたか? ストレスで胃が荒れテいまスね、ソレにスコシ睡眠不足なハズデス」
もう一方の腕を手に取り、視る。
「それにとてもヤッカイな、ヨーカイのようなモノに取リ憑かれたりした事がアリマセンか?」
言葉が失せ、場が凍る。
「お気に障ったならシツレイします、ですがこれは大事な事です。
人のケンコウ状態が分かればその人にあった料理が出せまス。
ワタシ、その為に世界中を回ってサマザマな料理を研究しました、ソレを祖国イタリアの料理に取り入れたのデス」
自然と自信満々に語るトニオ、そして自身が失せる士郎。
実に対照的な組み合わせであった。
「オー! ゴメンナサイ、説明するヒマあったら料理をお出しせねばイケませんデス」
一方凛はある事を疑っていた。
この人物は私達の事をよく知る人物、時計塔の人間、それも敵対する事を厭わぬ人物なのではないかと。
「サッ、早速料理に行きましょう」
前菜として、人数分の水と共に出てきたのは
A:和牛のカルパッチョ
B:イタリア風小魚とほうれん草のスープ
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最終更新:2006年09月11日 20:09