492 名前: 言峰士郎 ◆kceYkk4Fu6 [age] 投稿日: 2006/10/04(水) 01:29:20
「教会グルメ」
単純な話だ。
俺は監督役なのだ。
つまり、一方に加担する事は――建前上――できない。
何も知らん間抜けな一般人を巻き込もうとする阿呆や、馬鹿、そういった手合いに鉄拳制裁をする時以外は。
まあ、単純に言えば。
この状況で立ち向かうにせよ何をするにせよ、
それよりも先に女の釘が俺の頭――もしくは少女、さもなくば暗殺者の――を貫通するだろう事だけは明白だった。
「……う、おぉおぉ……っ!」
「――きゃあっ!?」
畜生、なんだってコイツはこんな時にこんな声を出すんだ糞。
罵りながらも少女を突き飛ばすようにして横に飛ぶ。
生まれた空間へ、影のように滑り込む暗殺者。
次いで、剣戟。
女の釘剣を受け止めるは、逆手に握られた短刀一本。
生身の人間ならば骨が砕け、肉が潰れるほどの衝撃を軽くいなすのは、
やはり彼の者が人外だからであろうか。
弾く。
釘剣で穿つ。
刀身で押さえ込み、懐へ飛び込む。
それを女は許さない。
暗殺者の身体へと鎖を叩きつける。
離れる暗殺者。
だが、その身に傷があるようには見えない。
ここまで瞬き数回。人間じゃあ、とうてい追いつけまい。糞ったれめ。
「ちょっと……あなた、何をして――」
「五月蝿い黙れ喋るなッ。んな公道で堂々と聖杯戦争やってんじゃねぇよ、殺すぞっつーか殺されるところだったじゃないか、俺ッ!」
「―――――――――」
あ、何かキョトンとした目で俺の事見てる。失礼な、俺を今まで何だと思ってたんだ。
「ただの口汚い少年ではないようですね」
失礼だな、ホントーにッ!
「……とまれ、一端撤退しとくのが利口じゃねえの? ぶっちゃけると、まだ七騎揃ってないんだ。
今ぶち殺しても殺されても犬死。夕餉のおかずにもなりゃしねえ」
「……………まあ、貴方の正体は後々聞くとして。
そうですね。その情報が確かだとすれば、このままでは、購入した食材が無駄になってしまいます」
「そーいうこと。お互い、まだ晩飯食って無いだろーしな。あのワカメはともかく。
つーか、地味な服の下がそんな代物なのは趣味なのか実益なのかという点は突っ込むべき?」
「失礼な、私を何だと思ってるんですか、これはちゃんとした戦闘服です……ッ」
「支給品?」
「それは……――まあ、選んだのは私ですが」
どうやら、両方って事らしい。
「へぇー」
「……何ですか、その目は」
「いや別に。まあともかく、そうとなれば三十六計とっとと逃げろと昔の偉い人も言ってる。
なんか手とか作戦とかそういった素晴らしくてゴイスーな代物はあるか?」
「誤魔化されないですから、そのつもりで。そうですね……あるには、ありますが。
それには私があの――あの、騒々しい男まで近付かなければ」
目前で繰り広げられる、この世ならざる者たちの戦いを見ながらの、これまた緊迫感溢れる会話。溢れてるよな?
「じゃあソイツで決まりだ。とっとと帰って俺の家で飯食おう。自己紹介も兼ねて」
「……女性を誘うにしては、随分と浪漫の無い台詞ですね」
……とりあえずココまでは生き延びた。問題はコレからだ。
見たところ、髑髏の男は鎖女を押さえ込めるだけの戦闘力はあるらしい。
となれば、その隙を縫って、俺がコイツをワカメのところまで近づける事ができれば良いわけだ。
さて、家に帰って晩飯食って、のんびり女性(口汚い)および髑髏さんから事情徴収と洒落込みたい、言峰士郎。
そんな俺は、一体、どんな戦術があるだろうか。
――ジャッジメン・タァイムッ!!
「サムラァイ・サムラァイ・ブシドー」:男は黙って前のめり
「神父の拳骨は死ぬほど痛い!」:レディファーストでどうぞ
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最終更新:2006年10月04日 05:27