76 名前: 白と赤 ◆ANW.KzCbpw 投稿日: 2006/09/24(日) 21:56:02
溺れ 「——また、また遊ぼう」
「じゃあね、お兄ちゃん、楽しかったよ。わたしが殺すまで死んじゃダメだよ」
そう言い、赤い狂戦士を従えて歩き出す。
次に会うときは殺し合いのとき。
待ち望んでいたはずなのに、何故か彼女は不機嫌だ。
このまま不機嫌な状態で帰るのは今日一日が無駄なことになる気がする。
その考えがますます彼女を不機嫌にさせた。
はぁ、と小さく溜息をつき。歩くペースを上げようとしたとき、
少女はその声を聞き振り返った。
「——また、また遊ぼう」
「——え?」
「だから、また会ったら、今みたいに話したり遊んだりしよう」
「でも……うん。そうだね、お昼に会ったらまた遊ぼう」
いつか殺すのに、切嗣の息子なのに、何故かその言葉をすんなりと信じれた。
じゃあね、と再び歩き出す。
その歩みは先程に比べ、軽やかである。
軽くステップを踏みながらバーサーカーに近づくと、彼が士郎とセイバーをみてることに気づいた。
「バーサーカー?」
声をかける。自分の敵である彼らを警戒しているのは当たり前のことだが違和感を感じた。
バーサーカーは彼女の声を聞き、顔を向ける。
浅黒い肌、白い髪、鉄のような瞳。
いつもと同じ彼。気のせいだったかな? 釈然としないものを感じながらも、もういい、と彼に命令する。
そして、思考はバーサーカーのことなど忘れ、今からのことを考える。
とても気分がいい、城に帰ってサラの淹れた紅茶を飲むともっといいだろう。そして夜になったら町に出て聖杯戦争をする。今の自分ならどんな敵でも大丈夫に違いない。そんなことを思いスキップする。
だから彼女は気づかなかった。いつも忠実で自分の言うことを守っていたその従僕が。彼女に言われても尚、二人を見続けていることに。
その目に理性の光が揺らいでいるのに。
そして夜が来、魔術師の時間となる。
最終更新:2006年10月16日 23:35