412 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/02(月) 02:29:40

瞬間。

脳内にズキュウウゥンという音が再生された。


唇が確かに接している。
それどころではない。
途方もない、体験どころか想像もしなかった速度で舌挿入と唾液交換が行われている。
まるで一個の、前進しか考えぬ生命体が口内に侵入したかのようだ。

拒否しろとどこかの衛宮士郎が訴えている。
受け入れろとどこかの衛宮士郎が叫んでいる。
その叫びによる物だけではない。
全身の力が抜けていく。
いつしか掴んで固定していたはずの腕からも力が抜け、逆に固定されていることに気付くのにそう時間はかからない。

足からも力が抜ける。
だが倒れることは出来ない。
まるで口に鉄の棒を突き込まれたかのように吊り下がっている。
その衝撃は脳天を貫通して後ろにぶち撒けられている。

そして触覚以外の全ての感覚も唇が接した瞬間にその機能を停止した。
だからだろうか、その直前見た光景、その女性の顔が一際美しく見えたのは。

まるで気付きもしなかったが、この瞬間呼吸は完全に停止している、心臓も多分止まっているのだろう。
己の脳天は既に衝撃と共に後方の壁に吹き飛び、血臭漂う中で抱擁されているのではないかと思うほどの昂揚と脱力。
それほど強烈な行為であった。

そして聴覚が戻る、もしかしたらこれまで己に襲いかかった強烈な感覚は全て、音速よりも早かったというのであろうか。
そんな思考が脳を掠め、そのまま意識は闇に落ちていった。


そんな光景を、他の面々はただ黙って見ているしかできなかった。
何も行動を起こせぬ。
まるで武道の達人を前にした、格闘技を囓った素人のよう。
その圧倒的力感を感じて動くことは出来ず、呼吸さえも躊躇わせるような感触。


ライダーが藤村大河の表情を見据える。
倒れた士郎を見つめているのだろうことは予想できている。
だが、目は隠れ表情は見えない。
それでも、口元が見えていた。
僅かに見えたその口は、笑うように歪んでいた。


そして。

混沌エンド:「あースッキリした」もの凄い笑顔で笑って見せた。
虎なカオス:「さー、二人ともー起きなさーい」士郎とキャスターの両手を掴んだ
黒いカオス:「ふふふ……おイタはいけませんよ、藤村先生」黒い声が衛宮邸を揺るがした。

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最終更新:2007年05月21日 00:43