480 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/03(火) 03:35:02
偶然であったが、彼女はその瞬間に薄く目を開け、瞬時に意識が覚醒した。
半ば同居する教師と、己の恋人の唇が確かに接していた。
偶然の類ではなく、明らかに意志を持って接していた。
「ふ、ふふふふ」
口元が歪む。
昨日停止したと思っていた己の中の黒い意志が強烈に立ち上るのを感じる。
気付けば、倒れていたはずの体が立ち上がっていた。
唇が離れ、倒れる。
そのときになってようやく声を発する。
「ふふふ……おイタはいけませんよ、藤村先生」
淑女としては恥ずべき事だが、殺す事すら厭わぬ漆黒の意志を纏わせて。
「あぁ、桜ちゃん、起きたのね」
黒い意志は滞留する。
「えぇ、起きましたよ藤村先生、突然どうしたんですか? 先輩にキスするなんて」
廷内に黒い意志が滞留する。
「ふふふ、憧れの人に娘が居るなんてしったら動転もするわよ、せめて息子だけでも繋ぎ止めたいという思い、間違っている?」
黒い意志をものともしない。
「間違っては居ませんが、手段が間違えていると思います」
「そう? でもね?」
近づいて。
「繋ぎ止めたいのは、みんななのよ?」
桜の唇にも吸い付いた。
「!?」
驚きは誰のものか。
何をしているのか、されているのか、何が起こっているのか理解した者はいない。
それはただ『途方もなく動転している』という精神の混乱、一種の錯乱状態から発生した物だ。
同じ状況。
意味もなく、それでいてかつての惨劇を思わせるほどの強烈な感覚に襲われ、漆黒の意志と共に桜の意識が沈んだ。
「ふふふ、桜ちゃんと士郎、間接キッスだぁ……これで、いつも一緒だぁ……」
そんな言葉と共に大河が倒れ込む。
床に転がる士郎、桜、大河、キャスター、美綴。
ついでにシベリアトラは番で庭に転がっている。
意識を保つのは僅かに5名。
凛、バゼット、ルヴィア、そしてジェネラルとライダー。
「……えーっと、これからどうしようか?」
代表して凛が言う。
どうしようも何も、極度の混乱で誰も頭が働いていないのは見て取れた。
しばしの沈黙の後。
「私は……」
最終更新:2007年05月21日 00:45