510 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/04(水) 04:20:24
「これからS市に向かい情報収集を行います」
バゼットが立ち上がった。
「何かあれば連絡を入れます、連絡先は……」
「ええっと、この家の電話にお願いします、番号は……」
「了解した、では」
足音と、玄関の開き、閉まる音が聞こえた。
「……さて、まだ日も高い、我々はどうするね?」
S市に到着して、まず向かったのは書店だった。
地図を確認し、地形を頭に叩き込む。
港と駅の位置は分かっているが、この市が戦場となるならば詳しい地形は必要となる。
特に戦場候補として選ばれうる人通りの少ない場所は直接現地にて確認するのがセオリーだ。
続いて港へと向かう。
数日前にシベリアトラを輸送した密輸船だ。
「船長」
「おぅ、バゼットの姉ちゃんか、どうした?」
「ここ数週間この港に搬入された品目、特に『人間』について表裏問わず調べていただきたい」
どこかの組織に所属しているならばともかく、どこぞの魔術師ならば密輸されて来るはずだと彼女は考えた。
そしてそれは己が調べるよりも蛇の道は蛇、彼らに任せるのは最適だろう。
「調べる……? そりゃ別に構わないが……」
「勿論報酬は先日の密輸とは別口で支払いましょう、但し急いでお願いします」
「ああわかった、日本円かユーロでな、米ドルは駄目だぜ?」
「ええ、分かっています」
用件は済んだ、あとは市内を調べるだけだ。
まず交通の要衝である駅前の探索を行う。
さすがに人通りは多く、戦いの痕跡もごく僅かしか残っていない。
言い換えれば夜はこの場所も戦場となったということだ。
駅前から少し離れた場所に廃ビルを見つけ、屋上へ向かう。
探索のルーンを描くと、高らかに魔術反応を示した。
「残留魔力……なるほど、恐らくアーチャータイプの遠距離攻撃……ここからならば駅まで障害物はない……」
手摺りから駅を注意深く観察する。
「しかし、ここにも魔力が残っているということは……駅前からこの屋上に向かって攻撃を?」
だとしても、手摺りなどに破壊の跡や修復の痕跡は見られない。
「すると……召還、か?」
その考えはすぐに立ち消える。
冬木という優れた霊地が近くにある以上召還するとすればそちらだろう。
「なんにせよ、ルーンだけでの探索は難しいか……だとすれば次に探索するべきは……」
既に日は傾き始めている。
出来るとしてもあと一つか二つといったところだろう。
「ふむ、ならば……」
最終更新:2007年05月21日 00:45