800 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/11(水) 03:59:04

「……なにこれ?」
思わず呟く。
魔力が異様なほど消耗されている。

かつての召喚時よりも己の力は向上しているはずだ。
歴史上失われた宝石を用いたにしても消耗した力はかつての数倍であり、異常だ。
まるで地面に叩き付けるように倒れ込む。
それを気力だけで支える。

「大丈夫ですか?」
そんな声で意識を繋いだ。
顔を上げる。
「……え?」
そこには男性が立っていた。
「私はセイバー、貴方に召還された者です、警戒は必要ありません」
穏やかな声だった。
肩を貸して立たせる。
「大丈夫よ……」
「いえいえ、無理をさせるわけにはいきませんよ、私は医者でもありますし」
「そう……それじゃ寝室まで連れて行ってくれると助かるわ」
階段を上がり、地上階に出る。
「ところで、貴方、お名前は?」
「私は遠坂凛……この土地の管理者よ」
「そうですか、それでは遠坂さん、貴方幼い妹が居りませんか?」
周囲を見回しながらセイバーが尋ねる。
「妹は居るけど……幼くはないわ、どうしたの?」
「いえ、召還の瞬間なのですが、誰か……少女のようでしたが、二人に両袖を引っ張られたような気がしたので……」
寝室のドアを開けて、セイバーの動きが止まった。
「セイバー、どうしたの?」
「ああ、彼女達ですよ、私の両袖を引っ張ったのは」
そう言って指さした先には。
「……あ」
「……う」
天蓋付きのベッドで楽しそうにぽわぽわと跳ねる二人の少女の姿があった。


「ご、ごめんなさい」
「すいません」
「その、つい、お姫様の部屋みたいだったのでー!」
実にすまなそうに謝る二人と。
「いえいえ、年相応に元気で宜しい」
二人の頭をなでるセイバー。
「ですがね、ベッドで跳ねるとベッドのバネや中の綿が変になったりするのであまり褒められた物ではありませんよ」
優しそうに諭すセイバーの言葉にシュンとなる二人。
「もういいわよ、セイバー」
凛は疲れた表情のまま三人に向き直る。
なんというか、セイバーは二人の保護者なのではないかと勘違いしてしまいそうである。
「セイバー……は良いとして、貴方達は何者なの?」
「はいっ、私達はキャスターです、マスターさん……で、良いんですよね?」
「うん、パスは繋がってる、間違いないよ」
凛の顔が固まる。
「はい?」
「ですから、私達はサーヴァントとして貴方に呼ばれました」
「達?」
思考に沈む。

セイバーはまだ良いとしよう。
穏やかな性格では戦闘には向かないかもしれないが、穏やかな中にも強い意志を感じ取ることも出来る。
だがこの二人はどう見ても小学生ですよ?
実年齢が百歳で十代後半くらいの外見の魔術師もいるが、二人は物腰や格好や言動からして外見が実年齢な小学生の少女である。
深く考えてもまるで正体が分からない。
というか何故三人もいるのか。

「えーっと、とりあえず、場所を移しましょう」
寝室で話すというのはどうにも落ち着かない。

801 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/11(水) 03:59:51

紅茶を4人分煎れ、居間に戻る。
——戻ると
セイバーは熱心に本に熱中して周りが見えておらず、
キャスターがソファーに座りながら眠そうな顔を覗かせ、もう一人のキャスターが眠らないように揺すっている。

頭を押さえる。
パスを確認する限り間違いなく三人は遠坂凛のサーヴァントである。
だが何か、致命的にズレている気がする。
まず召還したサーヴァントが三人もいること。
実際の所、宝石の力を補助に用いた場合、一年程度なら三人を八割程度の力で維持することは可能だ。
だが、三人を同時に召還することなどあり得ないことでは無かろうか、しかもキャスターが重複している。
元々サーヴァントがどれほど召還されるか分からない紛い物の聖杯を巡る戦いであり、そうなのかといえばそうなのかもしれない。
とは言っても、この現実がどうなるのか全くもって分からない。
気分的にはトラバントで銃弾飛び交う戦場を横断しろと言われた気分である。
次に召還したうちの二人が少女であること。
外見が当てになる世界でもないが明らかに二人は外見=年齢である。
しかも見れば見るほど友人、親友の類である。
英雄と崇められるのは無理があるのではなかろうか。
続いてセイバー。
先程自分のことを医者だと言っていた。
医者で剣士というのはどうにもイメージが合わない。
確かに古代の戦士であれば多少の医術の心得もあっただろうが、それで医者と言うには語弊があるのではないだろうか。

「ふむ、良い紅茶です」
セイバーが紅茶を口にする。
しっかり本はキープしているが。
「ほわー、おいしー」
他の少女キャスター二人組は似たような反応だ。

四人の喉は潤った。
それではまず——どうしようか
基本的な知識は勿論与えるとして

カ:「セイバーとキャスター二人はそれぞれ何者なのか」を尋ねる
オ:「キャスター二人はどう呼べばいいのか」を尋ねる
ス:「そもそも何故に三人同時の召還なのか」を尋ねる

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最終更新:2007年05月21日 00:49