835 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/13(金) 04:50:09

「そうだセイバー、貴方の剣を見せて」
その事を思い出す。

剣の英霊・セイバー。
ならばその剣は英霊の証にして身分証明そのものだ。
それさえ解析できれば、記憶喪失だろうと彼が何者であるかはすぐに判明——
「あ、私は剣を持たないので」
——しなかった。

「はい?」
きょとんとした声の直後に。
「貴方セイバーでしょ! なんで剣を持たないのよ!」
質問は既に詰問に変わっている。
さらに一歩違えれば拷問になりかねないほどの気迫で迫る。
実際の所、拷問など無理な話であろうが。
「いや、そんなことを言われても、この格好を見れば帯刀してないのは一目瞭然でしょうに」
そう言って両手を広げてみせる。
確かに帯刀はしていない。
ゆったりした服装だが、アレでは隠せて短刀が良いところだろう。
「人を殺すとか、したくはないんですよね……いわゆる綺麗事ですが」
笑みを浮かべながら、少しだけ真剣な表情でセイバーが言った。
「な……聖杯戦争は本来殺し合いでしょ? それを」
「その通りです!」
少女、なのはが大声で言った。
「殺し合いなんていけないことです!」
その言葉に隣の少女、フェイトも驚いている。
「戦うな、なんて言いません! 戦わなきゃ、分からないこと、分かり合えないことがあるのは分かってます……
 それでも! 人を殺してまで手に入れる価値があるものなんて、絶対にありません!」
その想いはとても強い、決して曲がらぬ尊き想い、彼女はそれを持っていた。
「と、いうことですね」
セイバーの言葉が続く。
「はぁ……分かったわよ、殺すことは出来るだけしないように……戦えなくなった相手を殺すような事はしないわ
 でもね、人を殺してでも聖杯を手に入れようとする輩はいるわ、まず間違いなくね」
彼女自身は力試しの為に参加した、だが本来、聖杯戦争は『聖杯を欲する者達』が争う物だ。
ならばその争いが殺し合いにまで発達することは容易に想像できる。
「だから、一般人に被害を与えるような輩は『再起不能になって<<リタイアして>>』もらうまで痛めつけるわ、確実にね」
「できれば……それも止めて欲しいですけど……」
先程までの強い調子はどこへやら、声のトーンが急速に落ちる。
「そう言えば、貴方達には私の方の自己紹介がまだだったわね……私は遠坂凛、よろしく、なのは、フェイト」
「はい! こちらこそ!」
凛となのはが握手する。
「……よろしく」
その二人の手の上に、フェイトの小さな掌が乗せられる。
そして凛は理解する。
姿を見ただけでは分からなかった、彼女たち二人の魔力の強さを。
通常状態で宝石でブーストした彼女と互角がそれ以上の力を内包している。
これが戦闘ともなればどれほどの力を発揮するのか……


そう考えたその直後、セイバーが立ち上がる。
「どうしたの? セイバー」
剣も持たない故にそう呼ぶことには抵抗があるが、そうである故にそう呼ぶ事にする。
「……誰か来ました、この時間に来客の予定が?」
「いいえ、こんな時間に来客の予定はないわ、こんな非常識な時間にはね」
既に時刻は深夜に至っている。
故に結界は攻撃態勢、その結界の外の不明体<<アンノウン>>を察知したということだろうか。
「ならば敵ですね……三人は援護を、私が前に出ます」
歩いていく、その背後は隙だらけに見えて全く撃ち込むような隙がない。
拳法を嗜む故に理解する。
彼の拳は剣に匹敵すると。


鍵を開け、後ろの三人にセイバーが指で合図する。
3秒前、2、1……
セイバーが扉を吹き飛ばすように開けると同時に結界の外へ飛び出し、三人が後ろに続く。

そこには——


敵襲:戦闘状態のセイバーの姿があった
誤解:「と、遠坂か?」混乱したまま組み伏せられている士郎の姿があった

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最終更新:2007年05月21日 00:51