931 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/16(月) 02:19:57
interlude——
朝が近い。
戦争の一日の終わり、日常の一日の始まりが近い。
「マスター、そろそろ戻ろう、朝が近いぞ……車も動き出している」
「わかった、戻ろう」
ビルの上、空が白み始める。
見れば街を通る高速道路には朝のトラックが動き始めていた。
彼のアジトまでは近い。
警戒は怠らないが、様々な考えが巡り出す。
「ライダー、帰るまでに軽く情報を整理しておきたい、間違っていたら訂正してくれ」
ライダーと呼ばれた男が頷く。
「まず、俺達はこれまで合計8度、6騎のサーヴァントと戦った、撃退は4回、撃破は俺達と同じライダー一騎」
「間違ってはいない、だが、敗北1、全力逃亡2というのも認識しておいてくれ、敗北を認める勇気も必要だ」
「分かっている、それでな、俺達が敗北、逃亡した3騎について何か気づいたことはないかと思うのだが、何かあるか?」
「そうだな、まずランサーだが、基本的な能力ならば俺が上だと思う、だが宝具は危険すぎるだろうな」
「……あれは宝具だったのか? 確かに危険だが、俺は真名を聞いていないぞ」
「あのな、数十メートル離れた『俺とマスターを同時攻撃する』なんて途方もない代物が槍兵の切り札でなくてなんだ」
点滅し続けていた信号が青黄赤を刻み始めている。
日常へと意識が戻っているのか、次の赤信号で立ち止まった。
「だが身代わりの式神との交換は可能だったな、御陰で助かったが」
「そうだな、アレはあくまで『真名を解放しない上での能力』と見た方が良いだろう、恐らく解放すればその回避は不可能だろう」
「ふむ、そうか、で、基本能力が上というのは?」
「実際戦ってみた感想だ、何らかのリミットがついているならわからんがね」
退屈なのか、愛用のナイフを両手で弄ぶ。
「じゃあ次、バーサーカーについては? 3日連続戦った方じゃなく先週の奴だ」
「連日の方も結構強いがね、あの敵、あれは……マスターの言ってたとおり即死意外じゃ無理なんだろうね」
カチャカチャと金属音が鳴る。
「宝具の正体とか分からないか?」
「さてね、ま、敵としては親しみはあるよ、AK……カラシニコフなんて久々に見た……攻撃力的にはそれほど違いは無いと思うがな」
良いながらライダーが拳銃を取り出して笑ってみせる。
「そうか、ともあれ、その二騎には今度アイツで突撃するしかないだろうな」
「そうかもな、手を打ちきったらやるしかないか」
青信号に変わり、歩き出した。
「ではもう一人、セイバーについては?」
「正直まるで不明、あんなヤバイ代物は想定外だね、まさか宝具で全力逃亡する羽目になるとは思ってなかったよ」
「アイツに、全力でぶつけたらどうなってたと思う?」
「無駄、なんじゃねーかな? あっちは無敵状態でこっちの攻撃は全て無効、ルール無視もいいところだ」
「まあそうだな、音速を突破するなんてライダーの宝具位しか有り得んと思っていたよ」
「俺の宝具では音速を突破できない、それは分かってるだろ?」
「それは分かっている、可能だとすればという意味だよ」
「そうか……とにかく、セイバーに関してやれることは油断しているところを一撃って事だな」
「そうだな……」
こうして彼等はアジトへ到着する。
地上の道路の日の光で白み始めていた。
——interlude out
932 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/16(月) 04:10:00
少しだけ奇跡的なことだがその日。
藤村大河は朝日が昇る前に起床した。
「おなかすいたなぁ……」
そんなことを衛宮邸の客室で呟いた。
宴会の最中は騒いでばかりだったので料理は余り食べていない。
そのまま疲れ果てて部屋で眠ってしまったのだ。
うん、少し早いが、士郎にご飯を作ってもらおう。
そんな決心と共に部屋を出て、家主である士郎の部屋に向かう。
その途中でふとイタズラ心が頭をもたげた。
こっそりと! 布団の中に! 潜り込んで! エロス的な! 勘違いを! させる!
こっそりと襖を開ける。
含み笑みが止まらない。
声は隠せているがこの顔を見たら怖がるかハッピーになるに違いない。
よほど疲れていたのだろうか、襖を開けて近づいているのに起きる様子はない。
朝食を作ってもらうという最初の目的としては不都合だが、イタズラとしては最良のシチュエーションだ。
布団に潜り込む。
目の前の浴衣は無防備に背中を向けている。
笑い声が漏れそうだ。
そして、そのまま目の前の浴衣に抱きついた。
「……あれ?」
いかにも事後という雰囲気を醸し出そうとして異常に気付く。
抱きついた体は妙に細い。
暗い中だったので気付かなかったが髪の色も、砂金のように輝いている。
そしてなんだか、身長も、縮んでいるような……?
掛け布団を持ち上げる。
そこには、浴衣姿の二人の少女の姿があった。
「し、士郎がロリコン変態誘拐魔にー!」
近所迷惑なほど凄まじい内容と音量の絶叫が邸内に響き渡る。
これは家主の提案であった。
布団を用意すれば音で迷惑がかかるということで、彼は土蔵の寝袋で寝ることとして少女二人に彼の布団を貸したのだ。
だが、そんな心遣いは、大河のイタズラ心で無に帰した。
当然のことだが、衛宮士郎も含めて全員が部屋に集結することになった。
「誰がロリコン変態誘拐魔か」
「こんな若い子を! 二人も布団の中に連れ込んで! 何やってたのさ士郎のロリコン!」
うわーんと泣きながら詰め寄る。
なんというか、少しくらい理由を聞いてください。
というか話が一方通行過ぎます、藤ねえ。
「ま、まさか先輩、『普通の女の子』には興味が無くてこんな形で発散を!?」
普通の女の子とは少し違う、と考えている桜もまとめて詰め寄ってきた。
桜の言う普通と藤ねえの言う普通は多分違うが、凄く問題のある発言じゃなかろうか?
その様子を、なのはとフェイトは呆然と見つめている。
「待て待て待て待て! この子達はだな!」
そこまで言って、どういう言い訳をすればいいかをまるで考えては居なかった。
キャスターについては一応切嗣の娘と言うことで無理矢理に納得させた。
だがこの子達まで一気にというのはもの凄く問題があるに違いない。
だからといってサーヴァントという説明は当然出来ない。
遠坂はずっと起きていたのか、朝だというのに不機嫌にもならず後ろで面白がって笑っている。
桜は桜で頭に血が上っているのか口裏を合わせるとかそう言うことはまるで考えてくれなさそうだ。
ライダーは、どうして良いか決めかねているようだ、協力は……桜次第だからしてくれそうもないな。
キャスターは混乱している、口裏は合わせてくれそうだが、急激な環境変化でさらに心労までかけるのはいかがな物か、却下だ。
先生は……屋根の上で出てくるタイミングを計っているようだ、これが一段落すれば出てくるだろう。
バゼットは……訝しげに屋根の上の方向を見ている、先生の気配を感じているようだ、協力してくれるだろうか?
どうするどうする! どうするんだ! オゥノーゥ!
子種をブチ撒けろ!(切嗣編):やはりこれしかないか「切嗣の娘だよ」
子種をブチ撒けろ!(士郎編):切嗣ばかりに責任を押しつけていられない「俺の娘ですヨ」
遠坂に押しつけろ!(親戚編):ここはやはり頼りになる人に頼るしかない「と、遠坂の親戚なんだ、なぁ?」
超絶! 家族計画!(養女編):この家の特性を最大限に利用するんだ「急遽ウチで預かることになった養女二人です」
増殖! フラガ族!(来訪編):外国からの人ならば無碍には出来まい「バゼットさんの妹なんだよ、な?」
最終更新:2007年05月21日 00:57