19 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/19(木) 04:29:56
ええぃ、一度通った道だし、これならば確実だ、これしかない。
「切嗣の娘だよ」
藤ねえの動きが止まる。
視線は少女達に注がれたまま。
「あ……」
「あ?」
「愛のだだ漏れは良くないと思うのよねお姉さん!」
「えっ?」
藤ねえは何を言っているのだろうか。
そりゃ確かに切嗣に大量の娘が、という話に持って行ってしまったのは悪いことだが……
……実際嘘じゃない可能性も……まあ、ゼロじゃない程度にあることだし。
「血の繋がっていないからといってこんな子供に手を出すなんて!」
あ、しまった!
土蔵で寝ていたことを説明していない!
「いや、むしろ血の繋がった妹なぞ存在しねえとばかりに早速手を出しやがったわね!?
そして私にゃとんと手を出してこないということは実は士郎は妹スキー<<ロリコン>>だったのね!?」
何その『兄より優れた弟なぞ存在しねえ』理論!?
いや、ちょっと待て、桜もなんだか凄い視線でこっちを見ているぞ。
別に桜が遠坂の妹だから手を出したとかそう言うことはないぞ、ホント。
だがなんとかしなければ、非常に困った事態になるのは間違いない。
うん、ルヴィアさんや、面白がってないで助け船をくれないか?
「いや、大丈夫、彼は普通の人ですよ」
笑みを隠すことなく、先生が姿を現す。
「彼は彼女たち二人に布団を譲って土蔵で眠ったのです、立派な好青年じゃないですか」
「ぬ、士郎、またお客さん?」
現れたのが普通の男性なので藤ねえの物腰は普通だ。
「藤ねえ、そう言うことは袖から手を離して言ってくれると嬉しい」
あと背骨を折らんばかりに腰から下をホールド状態にして体重を掛けてくるのも止めてくれると嬉しい。
「ええ、昨日から二人と共にこの家にお世話になっています、訪ねたのか深夜だったので挨拶が遅れました、申し訳ありません」
そう言って先生が深々とお辞儀をする。
「あ、いえ、藤村大河と申します」
頭を下げる。
必定腕も下がり、思い切り投げの姿勢になる。
当然のごとく、投げ飛ばされた。
受け身を取ったが、頭から落ちそうになった。
「私は遠坂六道、凛さんの親戚で、衛宮切嗣氏を訪ねてきたのです」
そんな、途方もない嘘を、先生は平然と語り始めた。
「は、はぁ……遠坂さんの親戚が何故に切嗣さんを?」
「それは彼が語ったとおりでして」
つまり、二人は切嗣の娘ですよと言いやがったのですか先生。
「つまり……二人は本当に切嗣さんの?」
「はい、実は二人の実母とは友人でして……」
実に『らしい』嘘をついて、藤ねえは納得したようだ。
「そうですか、六道さんは二人を養女と……」
「ええ、私自身医者ですからそう時間は取れぬ身でしたが、偶々時間が取れ、可能ならば実父にと思ったのですが……」
会話は続く、多少重苦しい雰囲気にはなったが、どうやら納得して貰ったらしい。
「なるほど、では?」
「ええ、暫くこの街に滞在しようかと思っておりました所、士郎君がこの家に滞在してくれて構わないと」
「ええ、そういう事情ならば大賛成ですから」
先生と藤ねえはお互いに凄く幸せそうな笑みを送る。
勿論先生もこの嘘の仕掛け人。
20 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/19(木) 04:30:43
――と、いうわけだから、よろしくね、なのは、フェイト
笑みを浮かべて念話を送る。
――ええ、分かっています
本来アイ・コンタクトだけで済むことだが、きっちりと確認できた。
「おはようございます、お兄ちゃん」
「お、おはようございます……兄さん」
笑顔でなのはが、もの凄く言いにくそうにフェイトが挨拶をする。
実際、彼女は兄となった人のことを兄と呼べては居ない、実際の兄でない人間を兄と呼ぶのには抵抗があった。
「言いにくかったら、士郎で良いさ、おはよう、フェイト、なのは」
「は、はい、士郎さん」
笑顔で全員に朝の挨拶を終え、朝食を全員で頂いた。
「それにしても、バゼットさん、はともかくとして、この数日で増えたわねー」
朝食時、藤ねえが呟いた。
言われて食卓を見渡す。
確かにその通りだ。
まずルヴィアが、次の日に、今眠そうな顔で食べている『切嗣の娘』キャスターと、庭で肉の塊を食ってるシベリアトラが増えた。
そしてその夜の襲撃でジェネラルが増えたんだったな。
そして1日開けて先生ことセイバー、そしてキャスターこと『切嗣の娘』なのはとフェイト。
さすがに4日で6人と2匹も増えるとは考えもしなかったものだ。
というか半分が切嗣の娘扱いである。
――まあ、それは後で考えることにしよう。
さて、ではまず、朝食後は何しようか――
最終更新:2007年05月21日 01:01