55 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/20(金) 04:52:44

朝食の最中に気付いたことがあった。
「そういえば美綴は?」
昨日はそのまま衛宮邸に泊まったはずである。
電話で口論になったようだが、電話の相手があの弟ではまあそうなるだろう。
「そういえばまだ起きてきてないわね……」
同室で寝ていたキャスターも気付いたようだ。

「おはよぅ」
そんな話の途中で美綴が顔を出す。
「おぅ、おはよう」
軽く手をひらひらさせて応える。
「ん、集合遅れた? ごめん」
起きたてだからなのか少し反応が鈍い。
「いや、別に気にする事じゃないよ」
というか日は昇り立てであり、まだ朝の6時過ぎである、大した用事があるわけでもない以上、早すぎると言えるだろう。
「いや、私も普段この位の時間に起きてるんだけどさ、私は目覚ましじゃないと起きられないタチでね」
「へぇ、そうなんだ、とりあえず準備は出来てるから食べよう」
「ん、そうさね」


朝食は終始和やかな雰囲気で終わった。
『妹達』の話には美綴も驚いていたようだが、「ま、大家族ってのもいいんじゃないの」と笑ってくれた。
昨日話題になった妹、キャスターの時も「生き別れの妹ってのは憧れる物よね、男としては」なんて言ってたけど。


朝食も終わり、美綴は帰宅した。
なのはやフェイト、先生のための部屋の準備もして、時刻は10時、時間としては悪くない。

出掛けよう。
ここ数日のドタバタで考えている暇なんてなかったからな。
「あれ? 先輩、どこか行くんですか?」
「ああ、桜、ちょっと公園まで出掛けてくるから、留守番頼むよ」
意思の疎通は出来ている、何をしようとしているかは桜も大体想像がついたからだ。
「はい、わかりました、お昼ご飯はどうしますか?」
「んー、どうだろう、分からないから、作る時間になっても帰ってこなかったら作らなくていいって事で頼むな」
「はい、任されました」
桜は笑顔で応えてくれた、だから安心して家を後にする。

56 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/20(金) 04:53:29

公園のベンチに座る。
考えることは多い……取捨選択が必要だ。
この事件に関係のない事柄……例えば『遠坂、誤認逮捕で留置所行き』とか『虎対ドリル事件』とかは忘れることにしよう。

桜のこと……確かに家では大騒ぎになった。
あのトラサルディーというイタリア料理店での出来事で間桐としての桜は完全に居なくなったと言えるだろう。
体中の毒という毒を出し尽くして遠坂桜として成長した姿に戻ったのだから。
しかし、料理を食べただけであんな状態になって衛生的に大丈夫なのだろうか、鼻血とか心臓とか凄かったけど。
考えが逸れた、本筋に戻す。

教会で聞かされたS市の聖杯戦争の異常。
あの日の段階で召還されたサーヴァントは20を超えていた。
死者こそ出ては居ないと聞いた、だが人が巻き込まれることは有り得るし、それは死者が出る可能性を意味するだろう。
そして勿論、上限が設定されていないのならばこれからももっと増える可能性だってあるだろう。

……そして、イリヤの事だ。
あのイリヤは何者なんだ?
触れることは無かったが、あの物腰に雰囲気、間違いなく記憶の中のイリヤそのままだ。
だがそれはあり得ない筈だ。
イリヤは、向こう側に行ってしまったのだ、薄れ行く意識の中で、それだけははっきりと覚えている。
「戻って……きた?」
それはどこまでも願望だ。
だが、その願望を彼女自身が否定している。
一緒に暮らすと言ったはずだ。
その彼女が戻ってきたのなら、あんな物に、こんな事<<聖杯戦争>>に参加するはずがない。
いくら考えても結論は出ない。
だから……次に会ったら、家に連れて帰る。
そう強く決心した。


決心してさえしまえば思考から外れても良い、後は反射でどうとでもなる。
だから次のこと、あの赤い男についてだ。
赤い男、イリヤのサーヴァント<<ジェネラル>>との戦いを止めたという事実。
キャスターが助けてくれなければ確実に死ぬだけの物量<<剣>>を衛宮士郎に向けて放ったという事実。
つまり『遠坂達を助け、衛宮士郎を殺そうとした』と言う事だ。
「これは遠坂と相談するべき事だったかもしれないな」
少しだけあの姿を思い出せば、嫌でもあの赤い外套を思い出してしまう。
英霊エミヤ、平行世界における未来の自分。
腕からの知識で、かつての己を恨んでいること、そして、あの戦いを戦い抜くだけの力と、そして……
「いや、それはどうでも良いことだ」
そう、イリヤの御陰でこうして生きているのだから。


考えが浮かび、消えていく。
ふと見れば。


切嗣の実子、姉なんだか妹なんだか:家に連れて帰ると考えたばかりのイリヤが隣に座って楽しそうにお菓子を頬張っていた
そういえば彼女は姉だよね:三枝さんが声を掛けて良いのかどうなのか、困ったように正面に立っていた
一方彼女は妹ですね:なのはとフェイトが荷物を持って歩いていた
姉を捜して三千里:地図を見ながらあーでもないこーでもないと思案に暮れている人を見つけた

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最終更新:2007年05月21日 01:03