91 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/21(土) 04:33:58

家に連れて帰ると考えたばかりのイリヤが隣に座って楽しそうにお菓子を頬張っていた。
楽しそうにお菓子を頬張る様子は、ともて微笑ましい。
だから、食べ終えてから声を掛けることにした。

「……こうして会うのは二度目かな」
「……え?」
この言葉は考えては居なかったことだ。
この公園で何度も会った、何度も話した、その事を、このイリヤ<<少女>>は知らないというのだろうか。
「イリヤ? イリヤ、なんだよな?」
「うん、そうだよ、私はイリヤ」
その笑顔は、やはり記憶の中そのままだ。
だが何か、決定的な何かが違う。
「シロウも食べる?」
「あ、ああ」
受け取った洋菓子は最近評判になってきた店の代物で、食べたことはないが桜が食べて美味しかったと言っていた物だった。
「ごちそうさま」
「うん」
イリヤが小さな手で頭を撫でる。
その、なんだか凄く気恥ずかしい。

「……私はね、きっとシロウの知っているイリヤじゃないんだ」
唐突に、イリヤがそんなことを口にした。
「そんな、イリヤはイリヤだろ、俺の知ってるイリヤじゃないか」
「そうかもしれないけど、でも違うの」
イリヤはとてもつらそうな顔をしている。
身を切るような思い出言葉を紡いでいると言うことは何となく理解できた。
でも、なんでそんなこと……
「私はシロウを知っている、でもその実感はないんだ」
それは、まるで英霊のようだと思った。
経験を実感できない、本を読むだけのような。
「だから、私はシロウの言うイリヤじゃない、違うと思う」
例えそうだとしても。
「それでも、イリヤはイリヤだって言ってるだろ」
こつんと頭を叩く。
「シロウ、レディーの頭を叩くのはよくないよ」
むっ、とイリヤが顔を顰める。
「ほら、やっぱりイリヤだ」
恥ずかしかったのか、顔を赤くしてぽかぽかと胸を叩いてくる。
そして叩き飽きたのか胸に顔を埋めてくる。
うん、やっぱりイリヤだ。
「あのさ、イリヤ――」


予定調和:「家に来ないか?」イリヤを家に誘うことにした
一波乱の予感:「あー!」野獣の絶叫のような大声が公園の入り口から聞こえた。

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最終更新:2007年05月21日 01:04