80 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/10/20(金) 23:41:14
先程も言った通り、体調は既に充分回復している。
だが、正直に言えば……頭の整理のほうが、まだしっかり仕切れていなかった。
自分で言うのもなんだが、あれだけの体験をしたのだ、そうそうあっさり整理できるものではないだろう。
学業をサボタージュするのは気が引けるが、じっくり考える時間が欲しいのも確かだ。
そういった理由から、私はセイバー嬢の持ちかけてきた案に素直に頷くことにした。
「そうですね。
ここは一つ、お言葉に甘えさせてもらいます」
「わかりました。
大河にはそのように伝えておきましょう」
「大河?
…………ああ、藤村先生のことですか」
いかん、一瞬、藤村先生と下の名前が合致せずに怪訝な顔をしてしまった。
そういえば藤村先生も、この家に入り浸っているという話だったな……。
しかし藤村先生を大河と呼ぶとは、セイバー嬢は思ったよりも度胸があるのかもしれない。
「では早速、私は皆に知らせてきましょう……ああ、そうだ。
着替えの服はこちらに用意してあるものを使ってください」
さっ、とどこからともなく折りたたまれた衣服一式を取り出すセイバー嬢。
本当に至れり尽くせりだった。
「何から何まで申し訳ない。
……ところで、この服もパジャマと同じ人物が?」
「ええ、とある女性が貸してくれました」
ふむ、再びとある女性か。
その言い方は気になるが、その人物には後で正式にお礼を言いに行かなければなるまい。
「それでは、また後で」
一礼をして障子を閉め、去っていくセイバー嬢。
それを見送って、私はふう、と一息ついた。
やれやれ、意外と緊張するものだ。
寝起きにさして面識の無い人と会話したのは初めての経験だったか。
「……鐘、まだ苦しいの?」
私のため息を疲労のそれだと思ったのか、雛苺が心配そうに見上げてくる。
その頭をなるべく優しく撫でてやりながら、私は答えた。
「いや、そういうわけではない。
色々あったからな、少しゆっくり考える時間が要るのだよ……」
そう、確かに考えることは多い。
私は一旦、雛苺に退いてもらってから、立ち上がった。
考えるにしても、まずは着替えなくてはならないだろう。
渡された着替えを手に取る。
赤い上着に黒いスカート、黒いニーソックス。
……はて、この赤が強調されたコーディネイト、どこかで見た事があったような。
それが果たしてなんだったか、と考えながら、パジャマのボタンを外していると……。
α:……思い出した。これは遠坂嬢の服の趣味だ。
β:良く考えれば、無断外泊をしてしまったことに気がついた。
δ:「氷室、目が覚めたのか!」と、勢いよく障子が開かれ…………え?
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最終更新:2006年10月26日 03:41