107 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/10/22(日) 01:44:28


「氷室、目が覚めたのか!?」

 がしゃーっ、と、勢いよく開かれる障子。
 反射的に振り返って見れば、衛宮がそこに立っていた。

「さっきセイバーの声が聞こえてきたから……って……」

 目と目が合った。
 勢い込んでいた声が急速に弱まる。
 衛宮の身体は、障子を開ききった姿勢のまま、停止してしまった。
 恐らく、私が今どんな恰好でいるのか理解してくれたのだろう。
 だが、私のほうも突然のことに身体が硬直してしまって動けなかった。

「…………」

「…………」

 視線を交わしたまま、互いに無言。
 私の指はパジャマのボタンを外す途中で止まっている。
 具体的に言えば、襟元から数えて三番目のボタンを外そうとしているところだ。
 それがどのくらいの位置になるかは……まあ、察してもらいたい。
 なお、念のために言っておくが、流石に下着は身につけている。

「…………」

「…………」

 静かだった。
 外から聞こえてくる鳥の声だけが、この場に流れる唯一の音。
 この場所だけ時間が止まってしまったかのようだ。
 止めているのは私と衛宮。
 そして、それを壊したのは二人のどちらでもなく、第三者の声だった。

「……鐘?」

 私と衛宮を交互に見比べていた雛苺が、小首をかしげて尋ねてきた。
 些細なきっかけ。
 だが、私達二人が再起動するには充分すぎるほどのきっかけだった。

「す……」

 まず、衛宮が動いた。
 1秒にも満たぬ速さで、顔全体が髪の色に負けぬほど赤くなり、視線は私の顔から外れて泳いだ。
 そして、油の切れた機械のようにぎこちなく身体を傾けると……。

「すまん氷室っ!!!」

 まさに脱兎。
 入ってきたときの勢いも凄かったが、そのときの倍以上の勢いで衛宮は転進、両手で障子を掴んで閉めようとした。

 ……そこでようやく、私の身体も動けるようになったらしい。
 その直後、私は――


α:そのままその場にへたりこんでしまった。
β:障子が震えるほどの悲鳴をあげた。
γ:手近にあった枕を掴んで投げつけた。
δ:衛宮のリアクションに、思わずニヤリと笑ってしまった。
ε:特に不快に思わない自分に驚いた。

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最終更新:2006年10月22日 07:23