226 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/10/24(火) 01:50:25
……入った。
かなり無理をして押し込んだ感はあるが、なんとか上着の体裁は整った、と思う。
後はスカートだが……み、短いな、随分と。
私の普段の服とは比べ物にならないほどミニなソレを、恐る恐るはいてみる。
「う……こちらも、やはり」
きつい。
私も、自分の身体が他人と比べてもかなり女性的な作りであることは承知している。
比べて、この服の持ち主はなかなかの細身だったようだが……。
「氷室ー?
どうしたんだー?」
「あ、いや、ちょっと待っていてもらえるか?」
しかし背に腹は代えられぬ。
障子の外で衛宮も待っていることだろうし、覚悟を決めて止め具をはめる。
「ん……よし」
スカートは、上着よりは楽にはく事が出来た。
腹部は窮屈だが、これで止め具がとめられかったことを思えばマシなものだろう。
続けて黒いニーソックスを履く。
こちらは履きなれないというわけでもないので、手短に済ませる。
最後に、鏡が無いので適当に手櫛で髪型を直す。
これで着替えは完了だ。
「……待たせてしまったな。
では行こうか、雛苺」
「うん!」
気を落ち着けてから、障子に手をかける。
ゆっくりと開いたその先では、やはり衛宮が待っていた。
「氷室、着替え終わったのか……って、その服……?」
衛宮が私の服装を見て、目を丸くしている。
……やはり、どこか違和感があるのか?
「セイバー嬢が渡してくれた洋服なのだが……。
少しサイズが小さいようでな。
どこかおかしいだろうか?」
「……よりによってアイツの服を貸したのか、セイバー……」
衛宮が何か、ボソリと呟いたような気がした。
小声だったので、なんと言ったのかは判らなかったが。
「?
何か言ったか?」
「ああ、いや……なんでもない。
別に、おかしいことは無いと思うぞ」
我に返った衛宮は、手を左右に振りながら、私の服装を肯定してくる。
しかし、そう言われても、はいそうですかと納得は出来ないのだ。
「そうか?
かなり無理して着ているからな、あちこちがきつくて仕方ないんだが」
立っている分にはまだましだが、これで身体を捻ったりすると……む、やはり辛いものがあるな。
……と、洋服の具合を確かめていると、衛宮が唐突に吹き出した。
「ぶっ……あ、あー、そっか、うん。
……その、ごめん、男としては非常にコメントしづらいんだが。
あんまりそういうポーズを取られると、その、なんだ、困る」
む……?
衛宮の言っている事がよくわからない。
私が身体を捻ると、衛宮が困るとは、一体……?
「あ」
視線を下に送って、衛宮の言葉の意味がようやく理解できた。
只でさえ密着感が尋常でない衣装。
そこに捻りが加わったら、つまり、そういうところがくっきりと見えるわけで。
227 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/10/24(火) 01:52:08
「……………………すまない」
再び赤面するのが自分でもわかる。
両手で胸元を押さえつつ、蚊の鳴くような声で謝罪した。
「だ、大丈夫だよ氷室っ!
一瞬しか見てなかったし、忘れろって言うなら全力で忘れるから!」
「そっ、そうか……」
慌ててフォロー……のようなものを口にする衛宮に、一応相槌を打つ私。
「………………」
「………………」
それっきり、お互いに無言。
廊下の真ん中で、何を言っていいのか判らなくなってしまった。
話を切り出すきっかけが無い……そんな時。
α:「あらぁ?」水銀燈というドールと遭遇した。
β:「うむぅ……」幽鬼の如き表情の遠坂嬢と遭遇した。
γ:「……どうしたのですか?」戻ってきたセイバー嬢と遭遇した。
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最終更新:2006年10月26日 03:43