204 名前: そんなにシリアス好きですかw [sage またサスペンスみたいな壊れ物をやりたかったんだけどw] 投稿日: 2006/10/23(月) 22:02:25

 判りきった結末を語る事はない。
 衛宮士郎は心を剣にしたまま、正義の味方になるだろう。



 聖杯戦争は終わった。桜は死にイリヤは死に聖杯は壊れ、冬木の街には再び平穏が舞い降りる。深かった夜の闇ももうすぐ空け、ようやく、当たり前の明日がやってくるのだろう。

「……そっか。終わっちゃったんだ」
「ああ。俺が、終わらせた」

 円蔵山の麓で遠坂と出会った。おそらくは、これから攻め入ろうとしたのだろう。ありったけの宝石にアゾット剣。ギルガメッシュとの戦いでアーチャーを失った彼女にとっての、最高の戦力をそろえている。だけど―――。

「やるのか。その腕で」
「当然。舐めないでよね。左腕一本なくなったって、わたしが立ち止まるわけないじゃない」

 刻印のあったその左腕は、肩の付け根から千切れている。いや、ほかならぬ俺が千切りとったのだ。信頼して預けてくれたその背中を裏切って。

「なあ、遠坂。結局、こうなる運命だったのかな」
「さあ、知らないわ。わたしは運命なんてどうでもいいし」

 遠坂は本当にいつものままの遠坂で、だからこそこれからやって来る未来が悔しすぎた。

「終わらせるわよ、士郎。わたし達の聖杯戦争を。あの子の命を奪った戦いを、ここで決着させましょう」
「…………そうだな」

 戦争はもう終わってる、なんて言えなかった。遠坂凛は止まれない。俺を殺すか、俺に殺されるか。俺が聖杯を壊した以上、それだけが彼女を止める全てだった。そして俺は……。

「殺してあげるわ、士郎。あなたはもう、死ぬまで止まらないつもりなんでしょう? だったら、今この場で、そのしけた顔を砕いてあげる」

 握りしめられる宝石を確かに眺める。たとえ左腕を失っても、俺と遠坂では勝負にならない。かたや天才、かたや半人前。遠坂は準備万端で戦いに挑み、俺は魔力を使い切った。笑ってしまうほど勝ち目がない。それでも―――。

 この体は剣で出来ている。



 遠坂の体から力が抜ける。息はもうしてない。鼓動も消えた。最後、彼女は光の宿らぬ瞳で俺を睨んで、馬鹿ね、と声にならぬ声で呟いた。朝日の中、胸に刺さるアゾット剣から影がのびて、それがまるで墓標に見えた。

 聖杯戦争は終わった。今度こそ、本当に。

 ただ一人残された俺は、これからどう生きていこうか。正義の味方になる為に、どんな道を歩もうか。ひとまず家に帰って、シャワーを浴びて一眠りして、そうしたら―――。

一、もうしばらくこの街に留まる。(ひとりぼっちの聖杯戦争
二、時計塔を訪ねてみよう。(ロンドンの休日)
三、教会に身を寄せてみるのはどうだろうか。(忘れられた紫陽花は野に咲くコスモスの夢をみるか)
死、世界など、壊れてしまえばいいと思った。(…AFTER ALL… EVERYTHING WAS BLOWN AWAY…)

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最終更新:2006年10月28日 13:53