217 名前: ひとりぼっちの聖杯戦争 ◆IkOakw2geY [sage] 投稿日: 2006/10/23(月) 23:33:18
あれから半年。今年の夏は熱かった。
まるでフライパンの底のよう、と親しくしていた女性は言った。全く、同感。街全体がビニールハウスになったのか、あるいは太陽がうっかり墜ちてきたのか。アスファルトに陽炎が揺らめく光景はまるで砂漠そのもので。道をゆく誰もが無口で不機嫌になっている。
そんな暑い中、俺はとある噂を追っていた。
曰く、全てを破壊する灰色の巨人。
曰く、闇夜に徘徊する裸足の少女。
曰く、風のように空を飛ぶ紫の美人。
曰く、願いを叶える万能の器。
曰く、―――。
噂達に共通点はあまりない。しかし俺には分かってしまう。それらが何に関わっているか。どんな出来事を指しているのか。聖杯戦争。魔術師達の欲望の響宴。あの決して忘れられない日々の噂が、何故、半年たった今になって街に溢れているのだろうか。今、新たな戦争が始まろうとしているとでもいうのだろうか。
しかし現在、この街で聖杯戦争が起こる予兆は全くなかった。
平和な日々は続いている。賑やかな昼間と平穏な夜中。そのどちらにも異常はなくて、ただ、噂だけが広まっている。どうした事だろう。人々の間でまことしやかに囁かれているそれは、明らかに恐怖と実感を伴っているというのに。
つかみ所のない不思議な出来事は錯覚のようで、だけどどうしようもなく不吉だった。何かよくない出来事のカウントダウンのような日々の中、俺は―――。
一、夜中、もう一度調べてみる。
二、誰か詳しい奴に相談しよう。
三、こちらからアクションをとって挑発しようか。
四、何もせず、しばらく様子を見るのはどうだろう。
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最終更新:2006年10月28日 13:54