653 名前: ブロードウェイを目指して ◆bvueWC.xYU [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 12:46:48
「え…………あれ、と…………遠野君?」
「………………よぉ、弓塚」
弓塚を守りたい。ただそれだけで俺は他に何の他意もなかった。これだけは信じて欲しい、皆。
昨日と同じくらい必死に繁華街を回り、裏路地をくまなく探した。
だから、俺は彼女が段ボールにすっぽりと入っているのを見たかったわけじゃない。
そりゃあ確かに体育座りしている弓塚の小ぢんまりした姿は可愛らしいと思うし、もし段ボールがなかったらパンツ見えてるだろうと思うし、
……いやいや、そんな煩悩はどうでもいい。
とにかく呆気に取られているのは弓塚だけでなく俺もそうだという事だ。
「………………と、とりあえず出れば?」
「あ……そ、そだね」
やっと俺の口から出てきた言葉に促されて弓塚はのそのそと出てくる。
うーん、何か非常にシュールだ。というかこの様子なら弓塚も警戒していなさそうだしもしかしたら大丈夫なのかも…………。
「と、遠野君。せっかくだからちょっとそこらへん散歩しない?」
先ほどの失態を誤魔化すように弓塚はそう提案してきた。
特に断る理由もない。その間は彼女といれる訳だし。俺は二つ返事で快諾した。
月が、綺麗だ。
満月とはいかない、かといって半月には膨らみすぎている中途半端な月齢。そんな月が真っ白な月光を降り注いでいる。
「綺麗だね。雲もなくて夜なのに晴れてるみたい」
「…………あぁ」
二、三歩先にいる彼女を追うような形で俺は夜空を見上げていた。
特に話題もない会話。目的のない散歩。いつしかのどこかのお姫様とのやり取りを思い出す。
――――願わくば、彼女とずっといたい
いつものお人好しで彼女を助けたいんじゃない。
彼女が哀れだからでもない。俺はただ――
「なぁ弓塚」
「ん? なぁに遠野君」
――――彼女を、弓塚を幸せにしてあげたいんだ
夢見月に何想ふ:「俺の家で暮らさないか?」と誘ってみる
25個目の染色体:「俺の家に来い」と強引に彼女を居候させる
ふたりごと:「………………」 何も言わずただ彼女の横を並んで歩いた
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最終更新:2006年11月06日 19:36