761 名前: ブロードウェイを目指して ◆bvueWC.xYU [sage] 投稿日: 2006/11/09(木) 17:15:21

「俺の家に来いよ、弓塚」
「……………………………………………………え?」

 己の耳を疑わんとばかりに目を瞬かせる弓塚。

「ほら、女の子がこんな薄暗い道端で寝泊りなんてよくないだろ?
 何ていっても、俺は弓塚が心配だからさ」
「……遠野君」
「もちろん屋敷の主は秋葉だから俺がそうしたいって言っても、秋葉に反対されたら
 何もかも終わりなんだけどね…………でも、努力はするよ」
「…………」
「…………その、駄目かな?」

 数瞬の沈黙、この時の弓塚の表情はとても複雑なものだった。
 この上なく喜んでいるようにも取れるし、どこか申し訳なさそうにしているようにも見える。
 ……やっぱり、無理な申し出だったのだろうか。

「いきなり、だったかな?」
「う、うん…………ちょっと、じゃないね。すごくびっくりしちゃった」

 ハハハ、と乾いた笑いを漏らす弓塚。一緒に俺も笑おうとしたがどうもうまく笑えなさそうなのでやめた。

「その…………遠野君はそう言ってくれたけど、秋葉さんとかはどうなのかな?
 ほら、メイドさんとかにも迷惑だったらちょっと……」
「翡翠達ならきっと大丈夫だよ。琥珀さんも嬉しがると思うよ」
「………………そっか」

 あと一押し、あと一押しだ!

「とにかくさ、今から言って頼んでみようよ、ホラ」
「あっ…………」

 気持ちが先行してしまう。俺は断りもせず弓塚の手を取ると強引に彼女を引っ張って彼女を連れて行った。





「弓塚さんをここに……?」
「あぁ」

 面食らったように秋葉の表情が固まっている。

「弓塚は話したとおりその…………こうなってからずっと外で寝泊りしてるからさ」
「………………」

 秋葉の後ろには翡翠と琥珀さんが心配そうに俺たちを見ている。
 いや、琥珀さんはどこか面白そうな事が起こるんじゃないかと口の端を上げている。

「それで秋葉……駄目かな?」
「駄目も何も、私はまだ悪いとは言ってませんよ?」
「え…………じゃあ」

 秋葉はふぅ、とため息をついて俺を見た。

「仕方ないでしょう? 一緒に劇を創り上げようとしている方が寝食に困っているというのですから」
「……秋葉さん」
「秋葉、本当にありがとう」

 俺が礼を言うと秋葉は急にそっぽを向いて、

「べ、別に兄さんに誉められたくてした事ではありません。先刻の事情を聞いて施しをしようと思うのは普通です」
「………………ははは」

 俺はそれが照れ隠しなのが分かってしまって思わず笑い出してしまう。
 でもやはりそれは秋葉は快く思わなかったようで「むーっ」と、眉間に皺を寄せてしまった。

「それでは弓塚先輩の部屋なんですが…………」

 秋葉が口を開く、


 その時歴史は動いた:「私と同じ部屋でよろしいですか?」

 プロジェクトX:「琥珀と一緒でもよろしいですか?」

 クローズアップ現代:「翡翠に一人部屋を案内させます」

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最終更新:2006年11月27日 19:44