6 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2007/01/14(日) 01:25:35


「確か、以前藤ねえがゲームセンターで大量に景品をゲットしてたな」

 UFOキャッチャーだかなんだかで、無闇矢鱈に押収してきた奴。
 両手に袋で二つも三つも持ち帰ってきたから、すごく印象に残ってる。
 教師としてそんな武勇伝を作ってていいのか、とはこの際言うまい。

「あれだけあるんだから、頼めばいくつか分けてもらえるだろ。
 よし、善は急げだ。今から行くけど、水銀燈はどうする?」

「ふぅん……いいわ、ついていってあげる。
 私もどんな人形なのか、興味があるしぃ」

 ――というわけで。
 俺と水銀燈は土蔵を出て、藤ねえの元へ。
 藤ねえは丁度、居間でテレビを見ている最中だった。
 連れだって入ってきた俺たちを見て、齧りかけのせんべいを咥えたまま振り返る。
 なんとも行儀が悪い。

「あれ? 士郎と水銀燈ちゃん、どうしたの?」

「あー、実はな藤ねえ。
 折り入って頼みがあるんだけど」

 むっくり起き上がる藤ねえを、上から見下ろしながら両手を合わせる。
 回りくどい言葉を使っても意味が無いので、さっくりと本題を持ち出した。

「頼み? なになに、お姉ちゃんに頼らざるを得ないような相談事?」

「や、そんな大層なもんじゃないんだけどな」

「あなたが人形を持っているって聞いたわ。
 それを私に寄越しなさぁい」

 俺が切り出すより早く。
 水銀燈がどこぞの金ぴかを連想させるような物言いで言い放った。

「え? 人形?」

 他人に物を頼むにしてはあんまりなその態度に、藤ねえの頭上にもクエスチョンが飛び交う。

「ほら、藤ねえこの前たくさん取ってきたのがあったじゃないか。
 あれを一つ分けてもらえないかな、って」

「あーあー、アレね。
 別に構わないけど、どこやったかなー。
 確か廊下に出しておいたはず……」

 よっこらしょ、と起き上がり、廊下においてある荷物を物色し始める藤ねえ。
 俺もとりあえず、その辺にある袋を漁ってみることにする。

「でもなんだか唐突だわね。
 なに? 水銀燈ちゃんもお仲間が欲しいの?」

「なっ、そんなわけ無いでしょう、くだらなぁい!」

 探しながら投げかけられた藤ねえの言葉に、思わず声を荒げる水銀燈。
 俺はと言うと、ああ確かにそういう発想もありだな、と密に納得していたりする。

「照れなくったっていいじゃない。
 そりゃあおんなじ人形が雛苺ちゃんだけじゃ、寂しくなるのも分かるわよねー」

「だぁから……!!」

 っと、のんびり納得している場合じゃ無い。
 これ以上ほっとくと、水銀燈が爆発してしまいそうだ。
 丁度そのとき、俺が手にした袋がなにやらもこもこした手触り……これか!

「あああ藤ねえ、探してる袋ってこれじゃないか!?」

 水銀燈が爆発する直前、ギリギリで目当ての袋を取り上げる俺。

「あ、そうそうそれそれ。
 いやー駄目ね、こうごたごたしてると見つけにくくって」

「その原因の九割九分五厘は藤ねえの所為だけどな。
 ……で、開けていいのか?」

「いいわよー、では、ご開帳!」

 袋の中に入っていた人形、真っ先に目に付いたそれは――


α:人猫というべきか、手足を伸ばしてだれきった人形だった。
β:大人気テレビ番組の、たんてい犬くんくんのぬいぐるみだった。
γ:というか、袋の中身、全部トラのぬいぐるみじゃないか!?

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最終更新:2007年01月14日 05:21