238 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2007/01/27(土) 23:58:57
「士郎、交差点だけど」
「ああ、そこを右に曲がってくれ」
バス停のある交差点を右に折れる。まっすぐ進めば、大橋に到る道だ。
……遠坂邸に向かうには、商店街を突っ切るのが一番早い。けど、商店街は午前中でも人が多いし、流石に駆け抜けるには分が悪い。
なので、少し回り道になるが、まず大橋側に向かってから、遠坂邸を目指す。
学園側に迂回することも考えたが、休日とはいえ、部活動をしている生徒もいる。なにより、知り合いに遭遇する確率で言えば商店街よりも高い。恐ろしくて近寄れない、というのが本音なのだ。
「…………」
「…………」
俺も水銀燈も、互いに無言。
道を尋ねること以外は、何も口にしないまま、走り続ける。
息が苦しい。
運動のせいじゃない。水銀燈に合わせて走るペースはそれほどキツくはない。
だから、この息苦しさは、横たわる沈黙のせい。
置いていかれているわけじゃないのに、話をするわけでもない、微妙な距離感。
昨日の夜から……いや、昨日の夜に初めて明確に示された境界線。
「士郎、次の道はぁ?」
「左に。その後はしばらくまっすぐだから……」
「そう」
俺の先を飛ぶ水銀燈の背中。
小さく、そして美しいそれを追いかけて走る。
俺が追いかけるのは水銀燈の背中。
水銀燈が向かう先はドールの住処。
目指しているところは同じだが、見ているものは違っている。
……ふと、水銀燈が言っていた言葉を思い出す。
『アリスになるのは、この私』
水銀燈は、アリスになるのが最たる願いだという。
アリス……人形師ローゼンが求め続けた究極の少女。
だが、そのためには他のドールを倒し、その命とも言えるローザミスティカを奪わなければならない。
「…………なんか、ひっかかるなぁ」
言いたいことはあるんだが、それが上手く言葉にできない。
そうしている間にも、どんどん沈黙という名の重圧は増していく。
この状況を変えるには、何かきっかけが必要なんだろうけど……。
α:思い切って、昨日のことを水銀燈に謝る。
β:思い切って、真紅のことを水銀燈に尋ねる。
γ:あれ? あそこにいるのは、バゼット?
δ:あれ? あそこにいるのは、カレン?
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最終更新:2007年03月20日 17:25