827 名前: ブロードウェイを目指して ◆bvueWC.xYU [sage] 投稿日: 2007/03/19(月) 03:31:04
廃工場の中には、案外何もなかった。
半分ほど上げっぱなしになっていたシャッターをくぐってから、俺はそんな感想を胸中で思った。
物々しい重機の類や鉄パイプなどの資材があるのかと予想していたのだが、何の事はない、
もう使われなくなった工場なのだからそんなものが置いてあるのも不自然だ。
所々にガラスの破片が地面に散らばっている。きっとガラの悪い不良達の集会所になっているのだろう、
スプレーで壁に汚い言葉が書かれている。
空き缶やら煙草の吸殻が紅い夕日に染まって至る所に散らかっている。注意深くゴミを見てみると古いものから新しいものまである。
随分と前から溜まり場になっているようだ。
(ここにはいない……か)
ため息をつく。いきなり見つかるとは思っていなかったが、シオンあたりならワラキアを見つけようとこういうきな臭い場所に来ると思ったんだが、
どうやら見当違いだったようだ。
「仕方ない、次に行こう」
俺は切り替えてこの場に二人がいないと見当をつけて踵を返した。
するとそこには、俺が誰よりも一番会いたくない奴がいた。
「どこに行くんだ、俺? これから愉しい殺しが始まるっていうのに」
「お前……やはり」
俺はそれだけ言うと腰を低くしていつでも飛び出せる体勢を取った。
目の前に佇む悪霊は紛れもなく俺とまったくの瓜二つ、否、眼鏡をしていないのと瞳の奥の色が違うのが唯一の違いか。
ともかく、遠野志貴は七夜志貴と対峙していた。
「おや、もう俺の存在には感づいてたのか。まぁいい、俺が俺を驚かすというのも趣味が悪い」
「よく言うぜ、自分自身がゲテモノのくせしやがって」
本当は昨日アルクェイドが見かけたのを聞いたからなのだが、ハッタリも場合によっては使いようである。
外から差す日差しが段々と消えかかり、空がゆっくりと夜の表情へと変わっていくのが肌で分かる。俺は七つ夜を取り出してすぐ刃を出した。
「手厳しいな。だがいい、驚かせる細工ならまだいくらでもある」
「……何?」
七夜の言葉に俺は聞き返す。が、俺の問いに答える気はないようであちらもナイフを出してきた。
「出会っちまったなら殺しあわなきゃな。だが……」
「!」
瞬間、立っていた七夜の姿がゆらりと揺れた。
俺はほぼ勘で右に体を跳ねさせる。避ける最中、薄暗い空間で鋭く光るナイフの軌跡が綺麗に俺が立っていた首筋に沿って走っていた。
「……」
「これくらいで終わってくれるなよ」
再び同じような状況に俺は脳裏でどうするべきか考える。相手は躊躇もなくこっちを殺しにやってくる。
それには俺も出せうる全力を出さなければいけない。
「いくぞ」
同時に七夜が消える。そして俺は……
死の舞の二の舞:さっきと同様に横っ飛びで回避する
俯瞰的傍観:バックステップで様子を見る
動かざること山の如し:その場を動かずに迎撃する
戦略的撤退:背を見せて工場から逃げる
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最終更新:2007年03月19日 09:10