358 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/28(土) 04:57:59

バゼット・フラガ・マクレミッツは考える。
数日前に訪れた教会のことだ。

与えられた情報は多くはない。
だがその事、その情報の解析だけを考える。
その間外界の情報は遮断される。

新たに召還された数騎のサーヴァント。
昼も夜も戦いを止めぬ者達。
遂に出てしまった民間人の犠牲者。
召還された数種のイレギュラーサーヴァント。
復讐者、アベンジャー。
将軍、ジェネラル。
僧正、クレリック。

想いは複雑だが、それでも彼女は戦いを、試練を待ち望む。
それは弱さを自覚する己を強くすると、彼女は考えている。

惜しむらくは、その考える場所が本来穏やかな夕食時の茶の間であると言うことであり、
その本来穏やかな場所と時間が現在、途方もない修羅場であると言うことだけだ。


夕食の準備の時間こそ多少大人しくスコッチエッグの挽肉を捏ねる作業を手伝ってはいた(なのは嬢、フェイト嬢も手伝っていた)が、
イリヤ嬢の暴走は夕食の時間もまだまだ終わらなかった。

なんだろうか、私ですらいたたまれなくなる。
「はい、シロウ、あーん」
なんてやられていたらそうもなろうというものだ。
茶の間はある意味で緊迫している。
笑い声はあるが誰も目が笑っていない。

特に遠坂嬢、間桐嬢は気配が違う。
なんというか、背後の空間が歪んでいるかのようだ。
なのは嬢は心配そうな目で食卓を落ち着き無く見渡している。
自分の感情がどうこうではなく、食事を楽しく頂けないのは良くないという瞳をしている。
フェイト嬢は、そんななのは嬢を心配げに見つめている。
他の面々は……バゼット氏と蒔、藤村教諭以外の食が進んでいない。
それはそうだろう、この状況下で食事を決行できる人間は相当肝が太いか無神経か、もしくは餓死寸前でもなければ不可能だ。
「さ、今度はシロウがあーん、ってやって」
その瞬間、確実に部屋の温度が2度は下がった。
冷戦期のキューバや第一次大戦前のサラエボに住んでいるような気分だ。
気分的にはまだ紛争地帯の地雷原でインターバル走をしている方が楽かもしれない。

イリヤ嬢の期待に満ちた眼差し。
遠坂嬢の敵意に満ちた眼差し。
間桐嬢はイリヤ嬢達を見てもいないが殺意に満ちている。

その眼差しの末、何も言うことはなかったが、イリヤ嬢の口元に春巻きを運んで食べさせた。
……温度はさらに下がったな。
瞳嬢など箸を置いてしまったぞ。

料理の味は決して悪いわけではない。
むしろ下手なレストランなどよりも上等な出来である。
……純粋にこの味を楽しめないのは非常に心苦しい。

だがこの緊迫感の現況であろうイリヤ嬢はどこ吹く風で離れることはなさそうだ。

……実に心苦しいことだが。
用意された夕食は3分の1以上残されたままとなってしまったようだ。


残り物の処遇:「それで、この残り物はどうするね?」夕食後に家主に尋ねてみることにした。。
泊まり部屋の準備:「おーいえみやー、私の部屋はどこだ部屋はー」たっぷり三杯もおかわりした蒔が言った。
甲斐甲斐しいお手伝い:「ごちそうさま衛宮君、何か他に手伝えること無いですか?」皿を洗いながら由紀香が聞いた。
デザートを作ろう:「よーし、しろー、デザートー」まだ食べるんですか藤村教諭。

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最終更新:2007年05月21日 01:13