502 名前: 371 ◆snlkrGmRkg [最後の台詞は禁じられた遊びから引用sage] 投稿日: 2006/08/10(木) 23:55:32
衛宮士郎にとって、訳の判らない危機なんて、当の昔に慣れている。
そう、こういう時は――!
「すんません勘弁してください!!」
諸手を地面について頭を下げる。
これぞ、日本伝統の謝罪様式・土下座である。
まず防御、しかる後低頭に謝る。
これぞ衛宮士郎の編み出した危機対応策――!!
「……はぁ?」
俺の一分の隙も無い土下座の前に、当惑の表情の人形。
ふ、完璧だ。
……もし、『情けない』とか言ってる人が居たらそれは甘い。
訳の判らない危機が日常レベルでやってくる人間に、そんな言葉は通じない。
例えばそれは、
約束をすっぽかされた時の遠坂だったり、
空腹時に稽古した時のセイバーだったり、
うっかりミスした時の遠坂だったり、
誰かと一緒に買い物に出かけた後の桜だったり、
金の問題に悩んでる時の遠坂だったり、
テンパッてる時の藤ねえだったり、
なんか機嫌が悪い時の遠坂だったり、
あととにかく遠坂だったり、って遠坂多いなぁ!
ともかくそういった、こちらのあずかり知らぬ事情で機嫌が悪い相手への、
俺なりの最上級の策がこれなのだ。
なお、謝りつつも投影は維持しておくのがこの際のポイント。
相手はこちらの誠意に関わらずガンドとか竹刀とか振るってくるしね!
「俺が触ったりしたことが不快だったのなら謝る!
お前が望むならこれからは触れないようにするから!
とにかくすまなかった!!」
「…………ふん、みっともなぁい。なんか気が抜けちゃったぁ」
どうやら幸いにして、人形は興が削がれたようだった。
「本来ならその下劣さを、nのフィールドの彼方で反省してもらうんだけどぉ……」
なにやら酷く気になることを口走りつつも、どうやら矛を収めてくれたらしい。
ばさっ、と一際大きく翼が鳴ると、羽根の嵐は見る見るうちに大人しくなった。
「あなたは私の発条を巻いた人間……だから、一度だけ聞いてあげるわぁ」
浮かんだまま近づいてくる人形。
今のところ、攻撃する意思がないようなので、
俺は間を隔てる『熾天覆う七つの円環《ロー・アイアス》』の壁を消去した。
「あなたが取れる二つの道、一つは私の手で死ぬこと。それが嫌だと言うのなら……」
言いながら、人形は俺の目の前に降り立った。
土下座の姿勢のまま頭を上げていた俺は、丁度人形と目線を同じくすることになった。
目線が交わる境界線、そこに自分の左手を差し出して、人形は言った。
「この指輪に誓いなさぁい。この私、薔薇乙女《ローゼンメイデン》第一ドール、水銀燈の下僕となることを」
左手の薬指。
神話において心臓と直結していると謳われたその場所に、薔薇の指輪が光っていた。
「――さぁ。跪いて、お舐めなさぁい」
α:誓う。
β:誓わない。
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最終更新:2006年09月03日 17:38