489 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/31(火) 04:14:27

「あ……」
驚きはどちらの物か。
湯煙が僅かに晴れ、三枝さんとなのは、フェイトの三人が見えた。

暫く互いに無言。
「す、すまん!」
バックステップで下がる。
「ど、どうぞー」
少女の言葉を冷静に捉える。
ああ、そうか。
考えてみれば彼女達は見た目通りまだ子供だ。
父親が健在ならば父親と風呂に入ったりすることもあるだろう。
それについてはある意味で問題はない。
彼女の言葉はひとえに好意から発した物だろう、ハプニングの結果とはいえ。
だが問題は、浴槽の中で真っ赤になっている三枝さんだ。
「え、えーっと……」
どうしたものか。
好意を裏切るというのは容易いが、それは非道な行為だと思う。
じゃあだからといって恥ずかしがる同年代の女性が居る中で風呂に入って良いのかと言われればそれもまた非道だろう。

どうすればいいのか、固まっていると。
「え、衛宮くんがよければ……ど、どうぞ」
なんて、真っ赤になりながら言ってくれた。
良いのだろうか、こんな展開。


「そうだ、士郎さんの背中は由紀香さんが洗ったらどうですか?」
なんて事を、フェイトが口にする。
「な……フェイトちゃん!?」
三枝さんが狼狽えている。
そりゃそうだろうなあ、俺もびっくりしている。
そしてフェイトは、口元が悪巧みをしている悪玉のようになっている。
いつ『計画通り』とか心中で呟くかわからんような感じだ。
「なのはは私が洗ってあげる」
「う、うん……いいのかな……」
それは俺が聞きたい。

490 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/10/31(火) 04:15:14

三枝さんの指が震えているのがタオル越しに感じる。
「え、衛宮くん……痒いところか……あるかな?」
「あ……あー……えっと、特に無い、かな」
全身の感覚は緊張で既に失せているからなぁ。
痒いところとか分からない。
「じゃ、じゃあ、全部洗うね?」
「あ、うん……頼む」
ごしごしと洗われている。
無言のまま数分が経ち、背中にお湯を掛けられる。
洗い終えたようだ。
「えーっと、ありがとう、三枝さん」
「あ……はい、どういたしまして」
「じゃ、今度は士郎さんの番だよ、ね?」
「んな――!」
フェ、フェイトさんや、少しイリヤ化しておりませんか?
というか分かってて言ってるよね? 声が凄く楽しそうだし。
「そ、そうだねそうだね、じゃあ今度は私がフェイトちゃんを洗う番だね」
そしてなのはもそれに乗った――!
大変だ、あかいあくまに続いてこあくまが出現している!
行動原理が善意とか好意なので邪険にもできないという、ある意味では遠坂以上だ――!
「うん、ありがとう」
楽しそうになのはとフェイトが位置を入れ替える。
――ま、まあ、『前を洗え』とか言われなかっただけ、良い、のか?

さっき以上に緊張している。
無防備な背中を見せて、三枝さんも緊張している。
と、とりあえず、スポンジを手に取る。
震えた指を出来るだけ押さえて三枝さんの背中を擦り始める。
「――はうっ」
ピクリと動く体、そしてその声に動きを止める。
「い、痛かった?」
「ち、違うんです、えーっと、その……こういうの、はじめてで……」
「えーっと、その、なんというか……できるだけゆっくりとするから……」
って、これじゃまるでベッドの中の会話だ。

魔術を行使するかの如き集中力で、優しく背中を洗い終え、お湯を掛ける。
「え、ええっと、ありがとうございました」
背中を見せたままで三枝さんが言う。
「い、いや、その、こっちこそありがとう……」
艶姿を堪能する余裕などありはしない。
そして、リラックスする暇もありはしない。
「それじゃ、浴槽に入りましょう、士郎さん」
いつから入っていたのか、フェイトとなのはが浴槽の中から腕を引っ張られて足が滑り、浴槽に頭から落ちる。
「ぷあっ!」
湯から顔を出す。
「な、なのは、フェイト、湯船で溺死とかそういうこともあるんだからこういう事はやめた方が良いぞ」
「はーい!」
元気いっぱいなのは良いが、多分聞いては居まい。
「さ、ほら、今度は由紀香さんだー!」
「え? ひゃ!」
三枝さんが引っ張られて頭から落ちる。
そう直感し、そうならないように抱き支える。

「だ、大丈夫? 三枝さん」
「うん、大丈夫です……けど」
思い切り抱きかかえているわけで。
いわゆるお姫様だっこの状態になっていた、全裸で。
ここで慌ててこの状態を解除したら頭が浴槽に命中しそうだったので、落ち着いて下ろす。

ううう、これは緊張状態が抜けないぞ……


大脱走:「あ」そんなことをしていたら続いてキャスターが入ってきた……なんとか脱出できないものか
地獄の黙示録:身動きが取れず、なのはとフェイトが浴槽の中で遊んでいる姿を、無言のまま二人で眺めている状態になった
ワルキューレの騎行:「つ、疲れた……」まるで疲れの取れないまま、布団に突っ伏した

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最終更新:2007年05月21日 01:18