606 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/11/05(日) 04:49:07

「……遠坂嬢が行くなら私も行くが、どうするね?」
氷室が遠坂に凄い事を聞いている。
いや、あの、今現在どの程度冷静ですか。
「え、ええ、氷室さんが良いというなら、いいわよ……」
遠坂、お前もか、お前もなのかっ!
顔を染めるほど赤らめるなら遠慮すればいいじゃないかっ!
「で、では、決まり、だな……」
どもっている、あの氷室がどもっている。
「衛宮、まず君が入りたまえ、その後から我々が入ることにする」
「そ、そうね、士郎と入るのがメインなのに士郎が入ってなかったら意味がないからね」
だが、二人とも顔は赤いが本気の目をしている、なんというか、逆らえません。

脱衣所で、着込んだばかりの服を脱ぐ。
幸い汗の類は殆ど着いていないようだ、もう一度風呂に入った後でも問題なく着られるだろう。
……風呂場の中で何も問題がなければ。


湯船に体を沈める。
湯煙の中で深呼吸をする。
途方もなく落ち着く。
今日は帰ってきてから落ち着く暇は殆ど無かった。
だからついつい湯船に体を浮かべてしまう。
「ああ……良い湯だ」
湯に体を浮かべる。
心の底からリラックスできるなぁ。

脱衣所から声が聞こえる。
「わー、カネの胸おっきー」
「うわ……ホントだ、桜とどっこいどっこい位……? 途方もない大きさね……」
「じろじろ見るのはやめたまえ……恥ずかしいではないか」
「ふっふーん、脱衣所でそんなこと言うの? 私達全員、これから士郎にじーっくり見られるのに?」
「私は君達の観察をしたいだけであって衛宮がどうこうと言った事では……」
「そうかしら? 『深淵を覗く時、深淵も君を覗きこんでいる』、カネが観察しているなら、きっとシロウもそうよ」
「ニーチェか、博学だな、イリヤ嬢」
「ふーんだ、この一節は有名だもん、読まなくてもこの位は常識よ」
「ま、それはそれとして遠坂嬢、じーっと私の胸を見るな、嬢のも良い形をしているじゃないか、バランスは大事だぞ?」
「み、見てないわよ、羨ましいと思っただけよ」
あの、すいません、やっぱり俺一人で入らせていただけませんか?
気付けば体はとうに縮まっていた。

「シーローウー!」
入るなりいきなりイリヤが飛びかかってきた。
壁にぶつかりそうだったので受け止めざるを得ない。
「イ、イリヤ……」
何かを言おうとするが言えない。
何を言おうとしたのか忘れてしまった。
「さ、シロウ、背中洗いましょ? 洗ってあげるから、私の背中も洗ってね?」
「あ、ああ……」
どうしたことか、やんわりと受け流すとか、そう言ったことが出来ない……ような――

イリヤの鼻歌と、背後の二対の視線。
無闇矢鱈に緊張する。
しかも今度の視線は妹達が中心ではないという、和らげる要素がまるでない状況だ。
必死に理性と冷静さを掻き集めてイリヤの背中を洗っていく。
どうやら集中しすぎて解析をはじめてしまったらしい、スポンジを通してスポンジが触れているイリヤの柔らかなを感じ取る。
まるで直接イリヤの背中を洗っているような感覚だ。

それでも、万難を排し洗い終えた。
一度思い切り深呼吸する。
「イリヤ、終わったよ」
「うん、ありがとう、シロウ、それじゃ、今度はあの二人を洗ってあげてね、それとも、私の前を洗うー?」
途方もなく驚いた。
脳が理解を拒否するほどの衝撃である。
二人も同じ状態だったようで、浴槽の中で惚けている。
そしてイリヤは小悪魔的な笑みを浮かべている。
「シロウは紳士だから、変なことしないもん、問題ないよね?」
いや、問題あるだろう、いや、既に三枝さん達の入っている風呂に入った段階で既にそうだが。
浴槽の中の二人は……お互いに顔を見合わせている。
どうしようか考えているようだが、二人はこちらを向いて、ゆっくりと頷いた。
まさか、二人とも了承したというのか?

覚悟を、決めねばならないというのか――!


リヒトホーフェン・サーカス:旧知の間柄の遠坂から洗おう
エリッヒ・フォン・シュトロハイム:事情を理解してくれそうな氷室から洗おう
俺は人間をやめるぞ!:むしろイリヤの前を洗う
あっばよォーッ:悪いが早くも限界だ、脱出を図る

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最終更新:2007年05月21日 01:36