26 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/11/18(土) 04:38:40

23:54・霧島家
二人で、空間の歪みに突入し、それと同時。
「SC空間を探知しました。使用者のイデア情報を確認。起動します……」
非現実<<キャスターの宝具>>が起動した。


歪んだ空間、失せた現実の中、男が立っていた。
男が振り返り、楽しそうに。
「やあ、久しぶりだね、本当に久しぶりだ」
抜刀しながら、笑いながら言った。

それを好機と見たのか、セイバーとバゼットが飛びかかる。
それぞれ心臓と脳を狙う一閃。
だがその一撃は、微笑と共に終わった。
「ああ、言ってなかったかな? この空間は概念を歪める事のみに特化した非現実、だから、早さ堅さは関係ないんだよ」
頭を軽く掻きながら言う。
脳を狙ったバゼットの一撃、硬化のルーンが僅かでも現実を歪めていたのか、頭を軽く掻く。
だが、彼女のルーン魔術をしてその程度。
いかにクラス特性としての対魔力が高かろうと、セイバーに魔術は期待できない。

そう判断したが故に、男はキャスターに視線を戻す。
「さあ、それじゃあ、やろうじゃないか、名城」
その笑顔に。
キャスターが衛宮士郎を庇うように飛び出した。

男の剣――つまり『セイバー』なのだろうという事が理解できる――の柄に取り付けられた宝石が光る。
キャスターの布その留め金となっている宝石が光る。
その二つの光は様々な物を空間に呼び出し続ける。

飛び交うのは、無限の概念だった。
瞬時に爆発し消え去る炎に似たナニカ。
刃もなく切断するナニカ。
十字に舞うナニカ。


それら無数の概念を、衛宮士郎は実感した。
この異常がなんなのか。
実感など出来るはずもないのに、問答無用で『アレ』がなんなのかを実感した。
二度目であるからなのか。
彼女のマスターという実感故か。

あれらは全て現実を侵す真実だ。
法則に則って世界を侵し、非現実を現実に浸食させる宝具。
一見し、ようやく実感した。


「ハッ!」
バゼットの正拳が白い怪物に直撃する。
同時に、白い怪物の動きが停止する。
彼女の手袋には新たなルーン<<スリサズ>>が刻み込まれている。
氷の巨人、茨の門、それらの意味する『停止せよ』と言う概念。
それが白い怪物の動きを一時的に停止させる。
「破壊は不可能でも、動きを止めることは可能……セイバー!」
そこに、真上からセイバーの爆撃のような拳――命中と同時に白い怪物が電撃に包まれる――が振り下ろされる。
「なるほど、宝具でなくとも、『現実を歪ませ得る』概念さえ付加すれば……全く無駄という事はなさそうですね」
電撃で焼け焦げ、それでも尚動き出そうとする存在に再び拳を叩き付け、ようやく一体が倒れ、宝石に戻された。
二人は残った白い存在達へ向け飛び込んでいく。

頭のどこかが冷静に判断を下す。
あの二人は途方もなく強い。
それでも、あの二人<<セイバーとキャスター>>の戦いに介入できる代物ではない。

あの二人の周囲に飛び交う概念は、剥き出しの呪いだ。
それは既に概念の付加などというレベルの代物ではない。
飛び交うのはまるで極上の呪いだ。
様々な形をもって綴られる『お前は存在しない』という強固な概念<<呪い>>。
宝具の加護のない生身の人間など、即座に歪み、削られ、二度と現実には戻れなくなる事を理解できる。
だが、それでも、その戦いを見たままになんて出来ない。

考えろ。
――ウミダセ
彼女のために何が出来る。
彼女を守り、ヤツを倒す、必要な事、必要な物はただそれだけだ。
強固な概念。
この空間に於いて尚、アイツを、あの剣士を吹き飛ばせるだけの強固な概念。
既にここにない、赤い弓兵の腕と共に咆えた。
「投影、開始――!」

27 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/11/18(土) 04:42:38

23:55・衛宮邸
将軍を意味するジェネラルはサーヴァントの中でも特異な存在である。
もとよりイレギュラークラスであると言うこともあるが、それだけではない。
その在り方はキャスターに近い。
直接戦闘における能力は基本的にキャスターと共に最弱であり、己の指揮する兵でもって戦列を築き、戦う。
総合戦力は一度に操る兵数が多ければ多いほど強い、だが個々の兵としてみれば少数の方が強力だ。

故にその700体の存在は、正に『ジェネラルの兵』そのものであった。
単体性能をしてサーヴァントを相手に足止めが可能、そして人間に対しては――彼女たち卓越した魔術師に対して尚――圧倒的に強かった



そして、その存在の第一目標が『マスターとサーヴァントの分断』であると、遠坂凛は判断した。
戦闘開始から僅か数分の事だが、それは共通の認識となる。
「まず、このままだと……」
ガントの掃射で壁に開いた大穴から侵入しようとする敵兵を牽制する。
だがこの程度ではまるで効果が見えない。
「上!」
ルヴィアの声、それが聞こえたと同時に何も考えずに最も跳びやすい右に全力で跳んだ。
その直後に先程まで立っていた場所に剣が突き刺さる。
あと少し遅ければ脳天に剣が突き刺さっていただろう。
「全身鎧だってのに……随分と軽快ね!」
追撃に移る黒騎士の右腕を、ライダーの釘剣が巻き取る。
「はああっ!」
そのまま桜を狙う別の鎧に叩き付ける。
「サクラ、リン、無事ですか?」
「ええ、大丈夫、でも……話は後!」
倒れ込んだ鎧姿が起き上がる。
「Fixierung,Eilesalve<<緊急一斉射撃>>!」
「Es befiehlt<<命ずる>>――Mein Schatten nimmt Sie<<影を掴め>>!」
二人の魔術を同時に受ければ、さすがに鎧も倒れただろう、だが、それは不可能。
既に二人の後方には別の鎧姿。
互いの背後に向け、魔術が放たれる。
その一撃を受け、後方に吹き飛ぶ。
その片方に向け、ライダーが飛びかかり、釘剣を頭に突き刺し、消滅させる。
「対魔術防御はあまりなさそうだけど、私達じゃ倒しきれない……」
桜がそう判断する、ルヴィアも、凛も、その判断は同じ。
「ジェネラルも……兵力を小出しにしかできないようね」
「仕方ないわ、敵の半分も引きつけてればこれ以上は贅沢は言えないわ」
――なのは、フェイト! そっちはどう!?

「数が多くて……対処仕切れているけど」
バルディッシュの一閃が、ようやく一人の身体を吹き飛ばす一撃を与え、消滅させる。
その一閃の隙、後方から剣が振り下ろされる――!
「援護、救援までは、厳しいです!」
初撃、レイジングハートの魔術砲撃が数体をまとめて吹き飛ばした。
だが、その間に接近された鎧姿を未だ倒すことも振り切ることも出来ない。


「判断、誤ったかしら?」
セイバーとの念話は途切れたままだ。
パスは感じるが、ナニカが向こうでも起こっている事は間違いない。
故に判断は保留。
ここで全力を尽くすのみ――!


想定外の戦力:(霧島家にて)「投影、完了――!」頭痛に苛まれ、それでも、その仕上がりを実感した。
鬼気迫る攻撃:(衛宮邸にて)「負けない――! この家を、守る!」桜の強い声が上がる、それは彼女たちの心を補強する。

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最終更新:2007年05月21日 01:52