123 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/11/22(水) 04:00:50
かくて舞台は衛宮邸へと戻る。
解放された兵力が同時に4体の敵兵を吹き飛ばす。
だがその隙を突いて側面、そして上方から別の敵兵が襲いかかる。
「ちぃ……しつこい!」
ジェネラル<<彼>>の全戦力を投入することが適えば、この程度の数なら数分で殲滅することは可能。
彼の内に存在する『最大16万の戦力』、そして『防衛戦』の展開さえ出来れば、千にも満たぬ敵兵など驚異たり得ない。
だがそれは現状に於いて不可能。
全戦力の解放だけでも多少の時間が必要であり、それまでの時間無防備となる。
敵兵は精兵であり、無防備であれば即座に殺されるだろうと理解している。
この屋敷を包囲している数百の軍勢は――同じ将軍であるためだろうか――対将軍の手法を理解している。
初撃における照準の甘い攻撃。
奇襲ですらないそれは、回避が十分に可能な一撃はマスターとの分断を狙った物。
そしてジェネラルへの包囲体勢を保ち、戦力を解放させぬままマスターを排除する。
幸いなことに衛宮邸に駐留しているのは単独ではなく、ライダーがマスター達の護衛に付き、さらには遊撃戦力として近接戦闘すら可能と
いう特異なキャスターが二騎。
さらに、上手く行けば更にセイバーらも戻ってくるだろう。
――だが、油断は出来ない。
個体の戦闘能力、サーヴァント単体としての将軍は最弱。
生き残り勝利するには兵力が必要である。
それを湯水のように消耗することを覚悟さえすれば現状でも勝利はできるだろう。
だがその選択はできない、下手に兵力の消耗を続ければ、最終的に敗北するだろう、何よりも――
「苦楽を共にした者達でなあっ!」
そう、故に兵力の無駄遣いなど出来るはずがない。
例え実際の命で無かろうと、彼にそのようなことが出来るわけがない。
上方へ向け半秒のみ兵力を展開、砲火を集中、襲いかかる敵兵を吹き飛ばし、瞬時に兵力を戻す。
だがその隙に接近した敵兵が刀を振るう。
「くっ!」
その一撃をなんとか回避、至近距離で兵力を一瞬展開、その一体を吹き飛ばす。
「ええい、こう包囲されては……援護兵力も出せんか!」
焦りが生まれているのを自覚する。
半数を引きつけているとはいえ、防衛線を展開せぬ間の攻撃開始であったが故に、十分にこちらの戦力を発揮しきれないという自覚。
それが更に焦りを産む。
――せめて5秒、いや2秒でいい、隙ができれば……!
現在の段階では、これは妄想に過ぎない。
124 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/11/22(水) 04:01:49
衛宮邸外、路上。
「せめて空中に飛べれば……砲撃する時間が出来るのに!」
鎧兵の剣戟をレイジングハートで受け止める。
離れれば飛ばれると言うことを理解しているのか、間断なく上方からのし掛かるように襲いかかる。
己の武装<<デバイス>>を構え直す時間すら与えられない。
ただ攻撃を受け止め、弾き飛ばすのみ。
横目で親友の少女を見やる。
フェイトの状況も同じような状況だ。
――全力が出せない
それが二人の少女の感覚。
『魔法』を展開するには時間が必要だ。
だが、それを理解しているが故に、兵はそれを許さない。
「はああっ!」
故に頼れるのは近接武装のみ。
弾き、次に接近されるまでの一瞬の隙を突いて弾き飛ばした敵を一撃する。
魔法の展開のみならず『弾倉』を装填する時間すら与えられぬ状況では、彼女たちの力はほぼ全て封じ込められている。
<<Master! Enemy chopper spotted! Warning! Warning! Warning!>>
「接近警報?」
聞き慣れぬ"チョッパー"という単語。
なのはのデバイスは彼女が認識していなかった敵を探知したらしい。
直後、爆音が二人の耳に入る。
時折街を飛んでいるのを見たことがある。
あれは……彼女たちが時折街で見かける"物"とは、似て非なる物だった。
『……戦闘ヘリ?』
3機の『MH-60L<<ブラックホーク>>』は彼女たちを無視し、衛宮邸へ突入した。
「な……あんなものまで!?」
「そんな……!」
彼女たちは剣で武装した黒鎧の兵を十字軍の兵<<テンプルナイツ>>だと思いこんでいた、そこへの完璧すぎる技術的奇襲。
連べ打ちのガントも、影を用いた魔術も、全てが一瞬止まる。
「く……仕方ない、リン、サクラを頼みます!」
議論の余地もない、一斉掃射が行われれば誰一人として助からない。
そう判断し、接近していた敵兵の頭を掴んだまま、ライダーが一息でブラックホークに飛びかかる。
一機のミサイルポットがジェネラルへと向けられ、別の一機のミニガン<<7.62mm>>が彼女たちへ向けられる。
「はあああああっ!」
釘剣を一機のローターへ、敵兵を向けられたミニガンへと叩き付ける。
そのまま、未だミニガンを向けぬもう一機へと叩き付け、二機を爆炎の中へ消し飛ばす。
「サクラ達を撃たせはしません! かかってきなさい雑兵共!」
爆炎の中、そして生き残ったヘリから生き残った兵士が飛びかかってきた。
その兵士達は、銃と迷彩服に身を包んでいた。
「二人! 惚けてる場合じゃないわよ!」
ライダーという援護はヘリからの降下兵にかかりきりになった。
そして、黒鎧の兵団は未だ尽きず、三人へと襲いかかる。
接近されれば敗北する。
それが三人の共通認識。
ガントが薙ぎ払い、影の魔術が接近を拒む。
だが、ライダーという守りの要を分断されてしまった以上、接近を許してしまうまで、そう時間はかからなかった。
「ッ……! 桜!」
凛が叫ぶ。
その声を受け――
最終更新:2007年05月21日 01:56