160 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/11/23(木) 05:13:57

『間桐桜』に敵を視認する余裕などない。
視線の方向へ魔術を撃ち込む。

だが視界に捉えていない状態で命中するほど使い慣れても、実戦慣れもしていない以上、その一撃は回避されるのは必定。
事実、僅かに狙いは右へ逸れ、逆に攻撃を回避できず、突きだした右腕が切り裂かれる。
「ッ――!」
切断こそ免れたが傷は深い。
ぼたぼたと血液が地面に落ち、血溜まりを形成するのを感じた。
膝をつき、それでも敵を見据える。
「桜!」
「くっ……邪魔ですわ!」
トドメの邪魔をさせぬと言わんばかりに、敵兵が間に割り込んだ。
桜に近づく兵に気をとられた直後から数秒、開いたガント掃射の穴から兵が飛び込んだのだ。


振り上げられる剣と同時、切り裂かれた右腕を突き出す。
「私は――負けません!」
剣が突き出されると同時、魔力塊を噴出させ、敵兵を吹き飛ばす。
この一撃で倒せはしないが、距離を開かせることは出来た。
代償に、刻まれた腕から、更に血が流れ落ち、腕に激痛が走る。

だが、敵兵が吹き飛び開けた視界、その上方。
上空より舞い降りる敵兵を見た。
「あ……」
瞬間的に発動可能な、桜<<小聖杯>>の魔力を直接撃ち出す力業。
だが、それは一瞬で巨大な魔力を撃ち出す故に、次の魔術までの数秒の隙を産む。

故に彼女に出来たことは、見据えるだけ。
ライダーが何かを叫んでいる。
姉さんが叫んでいる。
誰かが叫んでいる。

己が死ぬ、という事を思い出し、『死にたくない』と、心の底から思った。
そう、どうしようもなく危地に追い詰められたが故。

――ここに逆点の札は出現する。


出現した。
少なくとも彼女の目にはそう見えた。
色は紫。
ライダー、そしてかつての彼女の髪の色だ。
身体は黒で覆われている。
桜からは見えなかったが、剣の切っ先が出現した存在へ向けられる。
だが既に遅い。
回転の勢いを叩き付ける回し蹴りが炸裂し、まるで投げられた石のように放物線を描いて吹き飛んだ。

着地する。
姿に見覚えはない。

その手には剣。
段平のようなそれには無数の刻印が施されている。
厳しく、だがその中に優しさを内包した瞳が見下ろし――


虚血・低酸素血症:「貴方は傷の手当てに専念しなさい」そう言った
ガンサバイバー:「これを使いなさい」周囲の状況を見て銃を手渡した

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最終更新:2007年05月21日 01:56