210 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/11/24(金) 02:53:36
「貴方は傷の手当てに専念しなさい」
桜にそう語りかける。
無言で頷く。
繋がったパス。
紛れもなく目の前の女性は桜のサーヴァントとして召還された存在だと理解できる。
振り返り、他の全てを威嚇するように剣を一振りする。
本来威嚇にしか見えぬその一閃は、敵兵の首を弾き飛ばし、その命を速やかに奪った。
走り出す。
僅かに血濡れた剣が彼女の手より消え去る。
それと同時、無手となった彼女の両手に銃が出現した。
彼女は空中で滞空したままのヘリの方向へと走り出す。
発射音と共に倒れ行く兵。
それは再び動きを止めた凛達を狙う兵であり、ジェネラルを狙う兵であり新たに壁を越えて侵入しようとする兵である。
撃ち尽くした銃を捨て、さらに無手となった両手に再び銃を出現させる。
ヘリの爆炎から逃れ、地面へ投げ出された兵がこの段階になって意識を回復し、更に戦闘意欲を再燃させる。
すぐに彼女に向けられる8名からの銃口を彼女は無視した。
微妙に立ち位置を変えながら一時方向<<右前方>>、そして九時方向<<左>>で頭を押さえる敵兵を同時に射殺。
続いて真正面で並び立つ二人を続いて射殺する。
直後の銃撃を予測し、躊躇無く彼女は地面に転がるヘリの残骸を足場に跳び上がる。
この段階で彼女に向けられた突撃銃は14挺。
訓練された兵士の銃口に発生する反動による誤差、そして互いの位置、それを彼女は完全に把握している。
故に――
突撃銃の発射音が庭中に響き渡る。
仮に人間を対象とすれば必殺の破壊力を誇る死の旋風<<デス・ゲイルズ>>。
だが殺意を込めて放たれた数十の弾丸は、一撃たりとも彼女に命中することはない。
それどころか発砲と同時、彼女の周囲で悲鳴が上がる。
微妙に立ち位置を変えながら射手の狙いをコントロールした事で、7カ所で同士討ちが発生したのだ。
そのまま彼女は空中、曲技のような体勢で同士打ちから逃れた7名を射殺し、そのまま――
「重量操作<<レベルシステム>>――起動」
床<<ヘリの下部>>、そして地面へ向け間断なく発砲し、敵を射殺する。
床へ穿たれた正16角形。
それは彼女の『着地』の衝撃に耐えられず貫通する。
内部は既にライダーが制圧している事は彼女は既に予測している。
彼女の狙いはパイロットだ。
床を打ち抜いたままヘリ内部へ侵入、恐慌をきたしたパイロットの頭部を撃ち抜いた。
ヘリ内部で一瞬だけライダーと目が合う。
そして互いに頷きあい、墜落を始めたヘリの出口から脱出する。
向かう先はそれぞれ別。
ライダーは再び桜へ突撃を掛ける敵を阻止する場所へ、そして『彼女』はジェネラルを狙う敵兵の元へ。
剣が振り上げられるが、既に遅い。
腕に釘剣が突き刺さり、直後に真横からライダーの蹴りを受けて地面に転がる。
釘剣を引き抜き、上空からルヴィアへ飛びかかろうとしている鎧姿を釘剣で弾き飛ばす。
「ライダー、あの人は?」
「……彼女は攻め、私は貴方を守ります、サクラ……腕は大丈夫ですか?」
「ええ、なんとか……動かしたりは暫くできないかもしれないけど、血は止まったわ……制御が難しいんだけどね」
見れば、切り裂かれた右腕全体に影が巻き付いている。
影を憑依させ、血液を止めたらしい、なんとも力業である。
地上、そしてそれに続く上空からの銃撃。
正確無比と言っても良いその銃撃は、彼への包囲を緩める。
続く彼女の接近は、彼への包囲を粉砕した。
包囲は破られつつあった。
最終更新:2007年05月21日 01:57