246 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/11/25(土) 04:11:44

隙が出来た以上は勝負を決めに行くのみだ。

ジェネラルはそう判断した。

――ルヴィアゼリッタ、我が主<<国民>>よ、ここで勝利の女神を引き寄せる為に宝具を使用する、許可を
――いいでしょう、許可します、存分に力を振るいなさい! ジェネラル!
――心得た、期待に応えるとしよう、伏せたまえ


そう念話で答えた直後、世界が変異した。

季節は紛れもなく春。
その春の世界に吹雪が舞った。
それは彼の周囲だけでなく、過剰なほどに世界を浸食した。

その吹雪こそが彼の宝具である『カレリア地峡雪中防衛線』――マンネルヘイムラインの一端である。
『冬戦争』において彼の名を『雪中の奇跡』として世界に知らしめることとなるこの防衛線は自然を利用した天然の要害をさらに武装化した非常に強固な防衛線である。
50~60万もの兵力、1000両以上の戦車・装甲車両、800機以上の航空機を投入したソビエト軍に対し、彼の軍は総合しても国中から総動員し(8割が予備役からの動員と言われている)、それでも尚30万にも満たず、対戦車砲や対空砲も皆無に近く、歩兵用の銃すら不足しており、更には実戦に耐えうる装甲車両や航空機など数十に過ぎなかった。
それでも尚、この防衛線の他様々な自然を利用し、国境全域に於いて奮戦し、二個師団を一個連隊で壊滅させるなどソビエト軍に対し10倍の死者と15倍の負傷者を発生させる快挙を為し、さらにその戦果に驕ることなく、戦果、そして英仏からの支援によって主戦派が勢いづく中「まだ戦う力がある今こそ、講和を結ぶべきだ。軍が崩壊したら、もうどうすることもできない」と主戦派を諫めた。
そして欧州戦線の終結直前に再び行われた『継続戦争』においては枢軸国側に立って参戦したが、北欧方面以外での協力は行わず、一定の距離を保ち続けた。
これにより多くの領土は失ったものの、枢軸国側において唯一完全占領されることなく、講和による戦線離脱を果たす事に成功した。(イタリアは講和によって連合側に立つこととなったが、結果国土が戦場となっている)
さらに戦後次々と小国が併呑される中、独立を保つ下地を作り上げたのだ。
これらの業績によって、彼は戦後大統領となり『救国の英雄』と称されるに至る。

その真名『カール・グスタフ・エミール・フォン・マンネルヘイム』、フィンランドの英雄である。


「やはり紛れもなく、貴方は……!」
懐かしき故郷の吹雪の中、ルヴィアゼリッタは歓喜する。
フィンランド人である以上、彼の話は当然の如く知っている。
彼が居なければ彼女の家系、その呼び名は変わっていたかもしれない、もしくは断絶していたかもしれない。
幼少の砌その話を知った彼女は、彼を深く『尊敬』していた。

「固有結界……?」
見知らぬ吹雪の中遠坂凛は驚愕する。
世界を侵すモノがそう呼ばれるのであれば、それは紛れもなくそうであった。
防衛線を構成する環境をもって現実を侵すモノにある。
そして、その真骨頂は、その先にある。

吹雪によって視界が遮られ、音も吹雪によって遮られ始める。
黒の兵団がその異常を察知し、そこで意識が途絶える。
その側面、あるいは背後にマンネルヘイムの兵が出現し、一斉に攻撃を開始した――
銃弾、火炎瓶、手榴弾<<モトロフ・カクテル>>、それらの攻撃を受け、多くの兵士が倒れていく。
そして、仮に反撃に出られれば吹雪の中に消え去っていく。

これこそが彼の固有結界の特性であり、それを用いた包囲<<モッティ>>戦術である。
この固有結界の中で、彼の兵は彼の元からではなく展開された空間内のどこかに出現する。
それを知るのは将軍である彼のみ。
故に気付けば包囲され、装備を焼かれ、爆殺され、殲滅されていった。



夜間陸戦:「攻勢継続、倒し尽くすぞ」
夜間航空戦:「……あの機体は?」
夜戦終結:「……終わったか?」(別視点へ移動します)

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最終更新:2007年05月21日 01:59