291 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/11/27(月) 04:24:04
「ふむ……掃討には失敗したようだが、だが大凡……半数以上は撃破か……」
思考する。
情報、即ち己の切り札を知られたのは危険だし、痛手ではある。
しかし未だに切り札を使わぬサーヴァントが多数存在していることを考えれば、下手な襲撃はもう無いと考えるべきだろう。
防衛とは適切な攻勢があってこそ生きる。
今夜の戦闘で下手な攻勢は身の破滅を招くと身をもって思い知ったはずだ。
で、あるが故に、下手な追撃をして兵力を消耗する必要はない。
去る者は狙撃のみで攻撃し、深追いはしない、ジェネラルはそう決断し、兵を撤退させ、吹雪も停止させ始める。
だが勿論、偵察は続行する。
可能ならばこの襲撃者の正体を掴めるかもしれない。
「ジェネラル……」
彼の元へとルヴィアが歩み寄ってくる。
その所作は、どことなく緊張しているように見えた。
「ん? どうしたね?」
「貴方が現れたときから、予感はしていましたし、私の尊敬する『救国の英雄』だと。しかし、こうして事実だと分かってしまうと……」
「……唯の人で幻滅したかね?」
そう言って笑いかける。
「いいえ、そんなことは、むしろ人間であったことに安心しています、同じ人間であったと、それ故に、貴方は英雄なのです」
そう、英雄は人間だ。
例え人を超える力を持とうと、病に冒されようと、心が歪もうと、異星からの来訪者や人外の怪物では決してない。
どこまでも人間を辞めなかったからこそ、心が人間であったからこその英雄であるのだ。
「これからもよろしくお願いしますわ、マンネルヘイム……いえ、ジェネラル」
「ああ、これからも微力を尽くすとしよう」
握手が交わされる。
「ん? ……あの機体は?」
止みつつある吹雪の先、ジェネラルは空を飛ぶ航空機を見た。
炎上し煙で線を引きながら、その機体は結界に弾かれ炎上し、衛宮邸の庭へ落下する。
その爆音に驚いたのか、外にいた二人も走って庭へ戻ってきた。
「くっ……! 大丈夫か?」
咄嗟に庇ったルヴィアを確認する。
「ええ、私は大丈夫です、それよりも……あの機体は?」
ジェネラルは炎上している機体を注視する。
見ればコクピット無いに座席がない。
射出座席<<イジェクションシート>>という概念は当時なかったが、パイロットが脱出していると言うことは分かる。
『恐らく一撃でエンジンを撃ち抜かれて炎上したのだろう』と予想をつけた。
だが今の彼の役割は予想することではない、分析することだ。
「さてな……分からないが少なくとも私の時代の機体ではないな……レシプロではなくジェット戦闘機だ、現代戦闘機なら君達の方が詳し
いのではないかな?」
「そうでもありません、機体を見て双発か単発か……その程度しか分かりませんもの」
「そうか、国家同士の戦争が遠ざかればそうもなる、か……平和の証だな」
「この方角……S市の方角から飛んできたようですが?」
ライダーが言う。
「だとすれば……S市上空、ないしその先の海上で空戦、と言うことか」
音速、ないし亜音速で飛行すれば冬木からS市までの距離などゼロも同然だ。
「……陸上戦は一応のカタがついた、上空の戦い、君達はどうするべきだと思うね?」
最終更新:2007年05月21日 02:00