380 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/11/30(木) 04:32:46

「やれやれ、南部の部隊が壊滅とはね、一体敵は何がどれだけいることか」
市街地北部から南部へ飛行する。
南部方面の部隊は威力偵察を目的とした部隊で、ジャマー等によって生存性<<サバイバビリティ>>を高めた部隊だったはずだった。
そこで北部で戦闘を行っていた彼等が急遽援護に向かうところだ。
「旧型乗りという情報はある、だが腕は一流と言うことだ」
「へえ、そうかい、楽しめそうだな」
『パスファインダーより全機……敵機、12機を確認、データリンク』
データリンクで全機に上方が送信される、レーダーには15機、内3機は友軍の識別信号を発している。
「了解、槍を放て」
EA-6B<<ブラウラー>>がジャミングを起動、4機のF-14<<トムキャット>>からAIM-54『フェニックス』が全弾放たれる。
発射直後にAB<<アフターバーナー>>を全開にし、12機の反応の元へ突入する。
途中擦れ違う機体は、煙を発しながらよたよたと飛行していた。

「ミサイル発射を確認、全機、ブレイク! ブレイク!」
12機-機体を統一されぬ混成部隊だ-が蜘蛛の子を散らすように散開する。
散らされた混成部隊は、だが各々の思考の元、ハイGのループやバレルロールで背後に迫るミサイルへの回避を試みる。
ハイGループの急機動についていけず、数個のフェニックスミサイルが空中分解する。
だがその直後、回避した一機が爆砕する。
「一機を撃墜」
「確認した、次はあのF-14<<ドラネコ>>を狙っていくぞ」
「了解!」
ミサイルに気を取られ、さらにジャミング圏内に捉えられた彼等は低空より接近する緑に塗装されたF/A-18C<<ホーネット>>の接近に気付かず、機関砲の一連射を浴びたのだ。

「ほっほー、敵にもやるヤツが居るようだなぜ、何機生きてる?」
その通信はジャミングに遮られて届くことはない。
だが、そのF-14のパイロットの視界に味方の4機が彼と同じくバレルロールでミサイルを回避しているのが見えた。
内の一機<<ドラケン>>はトムに親指一本立てて
「よっしゃ、敵のドラネコは任せろ、お前らはあのハチを叩き落としてくれ」
最低限の挙措で互いの意志を確認、急上昇で稼いだ高度を一機の速度へ変換し、ホーネット、そしてトムキャットへと襲いかかる。

「なんだありゃあ……ドラケンに……クフィルじゃねえか、ドラケンなんて二世代前の旧型だぞ?」
ホーネットのパイロットが思わず身を乗り出して下へと向かったドラケンを見やる。
「油断するな、先導部隊は連中にやられたと言うことは間違いないようだ、機体はともかくかなりの腕前だぞ」
先の長距離ミサイルでの戦果はゼロ、つまり全機回避したことを目視で確認した。
その後の追撃で一機は落としたようだがそれは何の慰めにもならない。
彼等の得意とする長距離ミサイルの先制攻撃を全弾回避した相手は殆ど居ない、そしてその全ては一流の部隊だ。
「奴らはミサイル避けの魔法でも使っているのか?」
舌打ちと共に残存の兵装を確認する。
高速度で擦れ違う一群、その真下では一機のF-14が4機のF-14に戦いを仕掛けていく。
互いの連携を潰し、それどころかそれぞれの機体の安全圏を制限するような機動でついには一機を撃墜する。
「ちーぃ! マジでやりやがる!」
部下のベイルアウトを横目で確認しながら己の右で旋回機動を掛ける敵を睨み付ける。
見れば、変幻自在な機動を武器にし続けたその機体は速度を落とし、それでも尚そのバルカンの射線に部下の機体を捉えようとしている。
長距離攻撃、攪乱、それに続く近接戦闘は彼等の得意とする戦術であった。
だが、逆に近接戦闘では一方的に撃墜されている。
それは彼にとって屈辱でり、同時に強敵への喜びで震えていた。
「だがその旋回速度ならこっちの物だ!」
同一方向へ旋回、速度差を利用したハイGヨーで上方、背面を狙う。
だが、それすらも誘い。
隊長機がどれかを既に把握しているのか、ヨーの開始と同時に降下加速を開始、逆にローGのヨーによるシザース運動に似た動きで機体を射線に捉えてバルカンを連射する。
「ッ!」
状況を理解すると同時、被弾しながらもABを全開にして無理矢理射戦から逃れる。
「何発か食った! 被害状況確認……チッ、タンクに穴が開いたか!」
これでは基地まで戻ることは難しい、なにしろドロップタンクは既に投下済みだ。
そこでの決断は単純だ。
「"シュネー"2、3! "グリューン"の援護へ迎え、このF-14は並じゃない、数が増えて乱戦になればこっちが逆に不利になる!」
このF-14乗りは道連れにしてでも撃墜してやる!

381 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/11/30(木) 04:33:39
「本格的な空戦、それも相当な技量同士の戦闘ですね、今のところ市街地への被害は殆ど無いようですが、いつ被害が出てもおかしくない……状況は煮詰まっているようですよ」
空戦を眺めながらセイバーが呟く。
空戦など経験したことのない彼等だったから、実際の程は分からない。
だが、これが聖杯戦争としての空戦ならば、英霊としての戦いである。
ならばそれは並以上の戦いであるのだろう。
「分かっている……遠坂となのは、キャスター達は教会に行って被害者を助ける用意をしてくれ、あの神父ならやってくれるはずだ」
何しろ『巻き込まれた人間、敗北したマスターは可能な限り教会で保護』するのが原則だし、事実彼はそう言った。
「先生とバゼットはついて来てくれるか? 墜落した戦闘機の場所に行って誰か居るか確認して……できうる限り保護したい」
「あの……それなら私達は飛んだりできますからついていった方が良いんじゃないでしょうか?」
「ん? そうなのか?」
「はい、ね? レイジングハート」
<<Exactly!>>
「それじゃあキャスター、遠坂を頼む」
「ええ、分かったわ」
少しだけ苦笑しながらキャスターが返答する。
戦場で自分のサーヴァントを自分から離すなんて、とも思ったが、これがこの人なのだと考えたようだ。
それにセイバーとバゼットの戦闘力は昼間に見ている。
少なくとも直接戦闘なら安心して任せられるだろうと結論づけた。
「……私は少し気になることがあるので単独行動をさせてもらいます」
「え? バゼット?」
「無茶はしません、では……!」
そう言うと、市街地の方へ向け走り出す。


教会襲撃:遠坂達は教会へ向かった、そこでは――
市街戦闘:市街地へ向かった士郎達はそこで――

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最終更新:2007年05月21日 02:01