483 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/12/04(月) 04:49:07
煙の方向。
戦闘機――F-14の内の一機――は墜落時に爆発し、黒煙を上げている。
建物がそう多くない郊外ならば夜でも見えないわけではない。
二人は目立たぬよう、飛行魔法の応用、低空をスキップのように跳ねて行動していた。
高速で行動できるし、一瞬だけ見れば走っているのと区別はつかない。
「……学校、みたいだね」
「うん、家に落ちなくて良かったね」
墜落場所はぶどうが丘高校の校庭だ。
可能な限り最後まで立て直そうとしたのか、水平に落下し痛々しく痕跡を残していたが、部品はそれほど散乱していない。
建物への損害は無いことから、ここでの隠匿はそう難しくなさそうだ。
そんな状況だったから、二人の視線が炎上している機体の側に立つ老人に向けられたのは当然であった。
「あの、おじいさん? こんな所にいると危ないですよ?」
なのはが呼びかける。
その言葉で、視線を二人の少女に向ける。
「君達こそ、このような時に夜歩きとは感心しないな」
優しげに、そして楽しげに老人は微笑んで言った。
「ご、ごめんなさい」
確かに時刻は深夜と言っても良い時間帯だ。
「ま、それは良いとしよう……君達はこれが落ちるのを見ていた、と言うことかな?」
「ええ、そうです、それで、気になって」
フェイトが言う。
嘘ではない、確かに気になったのは事実だからだ。
「……本当にそれだけかね?」
視線が変わる、少しだけ厳しい物へ。
気配が変わる、好々爺から的を狙う弓士のように。
それに対する反応は過剰だったかもしれない。
跳び退き、デバイスをスタンバイからアクセルとアサルトへモードを変更する。
「ふむ、やはり君達は戦士か」
少しだけ残念そうに老人が言った。
「聞こう、君達は積極的に相手を排除する予定はあるかね? 例えば『魔術師でもなく巻き込まれただけ』のマスターを」
その表情は、二人の心に強く刻み込まれた物と同じ。
かつて戦った者達と同じ、守りたいという固い決意を秘めた物だったからだ。
「私達は、そんなこと絶対にしません、戦うのは、仕方ないときと、戦わなければ分かり合えない時だけです!」
力強く宣言する。
「……それは例えば、『誰かを殺す』事に何の躊躇もない輩が現れた時かね?」
「そんな事は……させません!」
力強い宣言、だがそれに感銘を受けた様子はない。
ただ、そこに感じ入る物はあったようだった。
「……よかろう」
老人は敢えて無防備な背中を見せた。
「私も、無駄な戦いは嫌いなのでね、避けられる戦いは避け、唯私の主を守るのみだ」
そうして彼女たちから遠ざかっていく。
「ただし、もし私と私の主を倒そうというのならば受けて立つ、その時は死を覚悟して来たれ」
その小さな老人の背中に、二人は途方もない天険の山を見た。
「……驚いたね」
完全に立ち去ったのを確認してから深呼吸し、フェイトが呟く。
背中に汗が流れているのを感じる。
緊張で流れたのだ。
「うん、なんだか、ものすごーく緊張したね……学校とか塾の先生に怒られているみたいだったね」
デバイスをスタンバイモードに戻す。
「……それじゃあ、士郎さん達の方に合流、しよっか?」
「うーん、一回凛さんの所に行った方が良いかも」
遭遇再び:「待って……何か来た」
教会へ:「それじゃあ一度凛さんの方に合流しよう」
市街地へ:「いえ、やっぱり士郎さん達のほうに合流しよう」
住宅地にて:(視点変更)
最終更新:2007年05月21日 02:04