503 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日:2006/12/05(火) 04:56:03

突然発せられたバルディッシュの警告音声。
「待って……何か来た」
その直後にレイジングハートも警告を発する。
「うん、そうみたいだね」
そう、『誰か』でなはく、『何か』が接近していた。

その姿が見えるまでに数秒。
それは正門から現れた。

その立ち姿は白い巌のよう。
露わになっている上半身には無数の傷が刻み込まれており、そこに刻まれた赤の刺青は返り血を思わせる。

その後ろに立つ姿は、狂気に歪んでいた。
「あの少女二人……」
「……唯の人ではないようだな」
「よかろう、それだけで十分だ、『セイバー』、さっきのようにやってしまえ」
命令する、その直後に影が沸いた。

ゆっくりと距離が詰まる。
男の両手には剣。
その剣は腕に絡みつく鎖、そして両腕と一体化していることを理解する、だが理解できるのはそれだけだ。
その殺意は『問答無用』と語っている。
考える時間など与えられはしない。

「なのは、下がって……後ろの影をお願い、余裕があれば援護して」
「……うん、分かった」
スタンバイからアサルトへ、同時になのはもスタンバイからアクセルへモードを変更する。


あの巨体ならば動きは鈍い、である以上敏捷性で掻き回す。
フェイトはそう結論し、真後ろへ全速移動する。
だが、その目論見は失敗する。
少女が己の後ろへ動くと認識した瞬間、男も後ろに跳び、逆にフェイトの背後を取る。
<<Check six>>
バルディッシュの声はそれだけ、打ち付けるように投げつけられる剣の一撃を飛行して回避する。
――危なかった
そう考えて、同時に己の甘さを認識する。
巨体ならば動きは鈍い、それは通常の認識であるが、英霊にそのルールは通用しない。
総合的な速度で勝つことは可能なようだが、掻き回す事などできはしない。
そして、そうであるなら、戦い方は自ずと変化する。
<<Photon Lancer>>
フェイトの周囲に、光の槍が出現した。


「シュート!」
複数の光弾が周囲に突き刺さる。
その内の一発が身体を掠めて地面、そして展開しつつあった影に穴を穿つ。
初弾は威嚇。
これで戦いをやめてくれるならという淡い期待を抱く。
「っと……凄い威力だ……だがな!」
だがそれはあっさりと裏切られる。
男の周囲に撒き散らされた影から獣が沸く。
耳障りな鳴き声と、蒸発していく苦しみと共に、少女二人に向けて獣が突貫する。
「悪いが、俺のために沈んで貰うぞ!」
獣の後ろ、男が取り出した物は、AK-74<<カラシニコフ>>であった。
「そんな、銃? レイジングハートッ!」
両腕で固定されたカラシニコフは狙い違わずなのはに向けて弾丸を飛ばし――
<<Round shield>>
展開される光の盾に阻まれる。
そう認識するまでの間に全弾を撃ち尽くす。
「……そんな物まであるのか、魔術ってヤツぁ厄介だな……僕が素人だってのは自覚してるが……」
獣が銃撃の間に接近する。
「セイバーッ! 何を遊んでいる……!?」
男がセイバーを見やる。


「ッ……!」
後方に光の槍を連れ、疾駆する。
フェイトは距離を保ちながら牽制の魔法で対抗する。
「……凄い」
フェイトは思わず呟く。
牽制の一撃とはいえ、威力はゼロではない。
だが、牽制の一撃には頓着せずフォトンランサーを捌いている。
その耐久性はともかく、敏捷性はその巨体からは想像もつかないほどだ。
その能力によるものか、中距離を保つこと自体が難しくなってきた。
攻撃に慣れてきているのか、接近速度が上がっている。
このままでは、接近されてあの二刀に斬られる結末が待っている――
ならば更に離れて……大技で勝負をかけるしか……
「えっ?」
巌の口元が笑う。
「主神の怒り<<Zeus's Fury>>」
それと同時、二刀が消え、その手に雷が現れる。
「そんな……ッ!」
セイバーが術式を展開する!?
フェイトの混乱するよりも早く、雷が放たれる。
「くっ!」
バク宙の要領で回避する。
だがその隙を狙い、更に数発が放たれる。
「正確さは殆ど無いけど……!」
途方もない手数。
それは正に雷撃の弾幕だった。
13発の雷撃を全速で回避する。
その回避が限度、フェイトはフォトンランサーの制御に失敗し、光の槍が虚空に消える。
だがセイバーは攻撃の手を緩めず、更に発生する両手の雷撃がフェイトを襲う。
ここに二人の攻守は逆転した。


格闘戦:近接攻撃に打って出る
魔術戦:真っ向から魔術で勝負する
回避継続:なのはの援護攻撃を待つ

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最終更新:2007年05月21日 02:04